1978年度小室ゼミナール案内文:「社会科学の復興」をめざして

『ソシオロゴス』2号(1978年)の31-33頁にかけて、小室ゼミナールの案内文が載っています。30年以上前のものですが、資料として掲載しておきます。
(文中で言及されている『ソシオロゴス』創刊号については、私は持っていないので確認できていません。)


研究会案内2
「社会科学の復興」をめざして

小室ゼミナール

小室ゼミは,社会科学界の風雲児・小室直樹氏が「社会科学の復興」という決意のもとに自ら主宰する自主ゼミナールです。
77年度の詳細は図1にまとめておきましたが,中心は理論経済学のエッセンスの検討及びその理解に必要な現代数学の習得にありました。
ゼミナールは多く,小室先生の概説を導入として,学生による報告・討論の形ですすめられます。その際,討論をとおして,ある理論の前提条件や状況設定,他の理論との論理連関等を詳細に吟味することが,小室ゼミの第一の特色と云えましょう。学生は,何よりも推論の進め方(way of reasoning),理論形成のポイントを学ぶことになります。論理的思考の徹底的な訓練がゼミナールの基本的なねらいです。
ところで,このような方法的に厳密な社会学理論の構築という志向が,現代経済学への関心のみにとどまらず,マルクス経済学,言語学,人類学,法学,政治学等の隣接諸科学へと理論的好奇心をかりたてずにおかないことはおわかりいただけるでしょう。小室直樹氏や橋爪大三郎氏に代表される,広範な学際的関心は,メンバーが共有する第2の特色でもあります。78年度は,法社会学マルクス経済学がプログラムに組まれております(図2参照)。
高校などで,問題解法中心の「理数科」を不得手としたために,小室ゼミを敬遠する方も少なくないと思われますが,肝要なのは,論理に対する感覚と,理論の構造の理解であります。これらを練磨するものが,基礎の徹底的な反復と,一点の疑念をも討論の狙上にのせようとする知的廉直さであることは云うまでもありません。なお,微分法,行列及び行列式の基礎に関してはサブゼミが開催される予定です。
Open to All! 予備知識は一切必要とされません。他大学学生,院生は勿論,年齢や性別,所属を問いません。図2のどの科目でも,何科目でも選択できます。関心を共有される方の参加を切望いたします。
なお,小室ゼミの研究成果の一部は,近く『経済システムの社会理論』(仮題)(ダイヤモンド社)として刊行されます。御感想,御批判をお寄せください。
また,ゼミナールの沿革及びOBの研究者の紹介は重複を厭って略しましたので,「ソシオロゴス」創刊号の紹介(間々田孝夫)を御覧ください。
最後に,盛山和夫氏,橋爪大三郎氏の卓抜な理論的リーダー・シップによって,77年度のゼミナールが例年以上に充実したものになりましたことを,両氏に感謝いたします。
更に詳しくお知りになりたい方は,世話人やゼミナールのメンバーに,遠慮なく御尋ねください。
世話人 白 倉 幸 男 [住所・電話番号を省略――引用者]

(文責 長谷川公一)



図1 小室ゼミ77年度主要トピックス連関図

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図2 78年度のプログラム

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