新潟大学人文科学奨励賞「阿部賞」:今年度は細田あや子先生の『「よきサマリア人」の譬え』が受賞

この賞は,新潟大学における人文科学系の研究の振興を目的として、2006年度に阿部洋一氏の寄附金を基に人文学部が創設したもので、今回で5回目を迎えます。

で、今年の受賞作は、細田あや子先生の『「よきサマリア人」の譬え』でした。授賞式の様子はこちら。ちょっと下に画像を借りてきました。

選考理由は以下のとおり。

細田あや子著『「よきサマリア人」の譬え 図像解釈からみるイエスの言葉』は、著者がハイデルベルク大学に博士論文として提出し、2002年にドイツ語で出版された書をもとにその後の文献をも考慮し手を加えて出版されたものである。本書は、ナザレのイエスが人々に「譬え」を用いて語ったさまが聖書に記されている点に着目し、中でも作例が比較的多く残されている「よきサマリア人」の譬えに注目し、福音書のテクストがいかに画像として表現されたかを問うた大著である。本書の特徴は、第一に、福音書におけるイエスの譬えを教父時代、中世神学に遡り、文献学的に詳細に分析している点であり、第二に、「よきサマリア人」の画像の表現方法・表現形態を丹念に読み解き、その多義的構造を明らかにし、さらには、それらの画像がどのように伝達され、受容されたかという画像によるコミュニケーションの問題にまで説き及んでいる点である。多くの信者が文字を読むことができなかった時代に「声の文化」のなかで図像が、朗読、身振り、そして視覚によって「身体的に」重層的に理解されたという著者の指摘は鋭い。西欧文化圏のみならずビザンティン文化圏をも包括した多数の図像を緻密に読解した本研究は画期的な業績であり、高く評価できる。」

「ドイツ語で出版された」というのは、

ですね。これはamazon.co.jpでは買えないので、amazon.deにリンクしてあります。


以下に、これまでの受賞作をリストアップしておきます。



「よきサマリア人」の譬え―図像解釈からみるイエスの言葉




密やかな教育―“やおい・ボーイズラブ”前史




ヴェーバー社会理論のダイナミクス―「諒解」概念による『経済と社会』の再検討



  • 第2回: 平成19(2007)年度

    堀健彦,『三輪長泰『改正越後国佐渡国全図並付録』,新潟大学「大域的文化システムの再構築に関する資料学的研究」,2007年

これは残念ながら非売品のようです。



蒙地奉上―「満州国」の土地政策 (汲古叢書)