Steve Hickner, Simon J. Smith監督『Bee Movie』 (邦題:ビー・ムービー)

ビー・ムービー [Blu-ray]

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子供向けの甘ったるい映画だろうと思って観る気がしなかったのだが、順番なので(笑)頑張ってみたら、大人向けのパロディ映画だった。しかし問題は、話があまりにもつまらないということだ。そこそこに散りばめられたパロディギャグは、笑えるのもあるが(くまプーとか)、多くはパロディであるということはわかっても何のパロディなのか、私の知識ではわからなかった。わかって笑えないのもあったが。
で、実のところ、作り手が心を砕いたのはほぼこのパロディ演出だけであり、ストーリーがあまりにも練られていない。
主人公は野生のミツバチで、巣の中がひとつの国みたいになっている。どんだけ広い巣なのかという点につっこむと止まらなくなるのでやめておく。学校を卒業するとただちにハチミツ製造工場で死ぬまで働かされるわけだが、主人公はちょっと反抗して外の世界に出てみる。で、掟を破って人間に話しかけて友達になる。ミツバチは英語が話せる。巣の中で他のミツバチと話していたのも英語であり、外の世界で蚊とかと話していたのも英語であることが判明する。ということは、巣の中の、学校があって工場があってみたいな光景も、すべてメタファーではなくて現実であるということになる。もちろんこの点もつっこみはなしだ。
それで、スーパーでハチミツを売っているのを見て、自分たちの産物が人間に搾取されていることに気づき、養蜂場に行って、煙をかけられつつ奴隷労働をさせられている同胞を発見する。これは訴訟だ、というわけで、いろいろあって勝訴。ハチミツはすべて人間から没収されハチのものに。すると在庫過剰で働く必要がなくなって、その結果、花々は受粉ができずに枯れていく。
これはいかんということで、主人公は人間のヒロインと一緒に、花粉のついた花をとりにいき、飛行機で帰還・・・する途中で、パイロットが気絶、危機一髪を飛んできたハチたちが救い、また花粉をばらまいてNYに花が戻る、という話。いろいろはしょったが、まあ。
で、致命的にダメなのは、人間の搾取による奴隷労働=養蜂からは救われたものの、ミツバチ界での、学校出たら死ぬまで単純労働(主人公の父親の担当は蜜を混ぜるだけの簡単なお仕事)というそっちの方の搾取構造は、各労働者から見たら何一つ改善されてないわけだが、ハチたちも、おそらくは作り手たちもそのことに気づいていない。
受粉できなくて云々の危機のところも、「受粉できないから枯れる」って、因果関係的におかしくない? で、逆にラストで、「受粉したから(枯れていたのが)回復する」ってのも無茶苦茶だよねえ。
クライマックスの、墜落しそうな飛行機をハチたちが救うところも失笑以外に何をしたらいいのか分からないような代物。まず、なんでミツバチごときがジェット機に追いつくんだよ! で下から支えて持ち上げるって、そんなの何万匹いても無理だろ! 百歩譲って、そのへんには目をつぶるとしても、着陸のさせ方がまたひどすぎ。地上で待機しているハチたちが、飛行機から見えるように、自分たちの黄色と黒で巨大な花の模様を描くのだが、それが管制塔の目の前で、他の機が停まっている間のスペース。駐車場じゃねえぞ。もちろんそういう設定なので、「着陸」といっても、すでに「飛行」しているわけではなく、ハチたちに持ち運ばれているだけの飛行機が、駐車場にそっと降ろされるだけ。全然盛り上がらねえ!
どうしようもないツッコミポイントは他にも無数にあるが、もうこのくらいに。とりあえず、他のちゃんとした B Movie に謝れ、といいたい。