Jon Favreau監督『Iron Man』 (邦題:アイアンマン)

これは面白い!
変身ヒーローものって、実は普通の人がヒーローになるまでの経過が一番面白かったりするわけだけど、この映画ではそここそを、かなり本気で描いている。
主人公は「死の商人」、つまり米国の兵器開発企業の社長であり、17歳でMITを首席卒業している天才エンジニアのTony Stark。新製品のお披露目にアフガニスタンに行った帰り、アルカイダ的なテロリスト集団に襲撃・拉致され、自分たちを襲ったのが自分の会社の兵器だったことを知って衝撃を受ける。洞窟の奥の工廠(というか作業場)で、新製品のミサイルをつくれと言われる。
この辺、そんな無茶な、という感想を禁じ得ないが、Starkは天才なので、もっとすごいものを開発してしまう。arc reactorと呼ばれる、ウルトラマンのカラータイマーみたいなやつで、実のところ、無限のエネルギー供給機関のようだ。これのおかげで、襲撃の際に心臓に損傷を受けたにもかかわらずStarkは生き続けることができるし、おなじ作業場で開発したパワードスーツもこれで動く。
この脱出劇がなかなかそれ自体として楽しめるドラマを含んでいるし、パワードスーツで大暴れして脱出し、帰国後、自分の工廠でもっと本格的なスーツの開発をするところとかは、メカ好きとしてはかなりアガる。
物語は、兵器開発の中止を宣言したことによる会社幹部との対立を軸に、秘書との微妙な恋愛劇をおりまぜつつ、パワードスーツ同士の対決がクライマックスになる。もちろん最後は勝つのだが、開発時の試行錯誤のシーンが、ちゃんと勝因の伏線になっていて、作品全体に有機的な統一感がある。
主人公が兵器会社の社長という設定がいいが、arc reactorの完成によって、そもそも米国の軍事戦略の要である石油利権という構造が根本から変化してしまうのではないかと思う。そういう意味ではアイアンマンは「米国の敵」なわけだ。今年は続編が公開されるそうなので、その辺、どういう主題設定にしてくるのか楽しみ。