Tim Story監督『Fantastic Four』(邦題:ファンタスティック・フォー)

F4っていうもんだから、道明寺司の体がゴムのように伸びたり、花沢類の体温が超新星爆発並に上がるのかと思ったら、アメコミでした。
ストーリーは超簡単。宇宙線を浴びて超能力を身につけた「奇想天外君」、「透明女」、「人間松明」、「物体」の4人が、悪の道に落ちた「〈最後の審判〉博士」と、超能力バトルを展開する、というそれだけの話。
細かいところを見出したらちょっと止まらないのだが、なんというか、現実にこんな能力を持っている人がいたらどうなるかという想像力が、作り手に決定的に欠如しているのは確か。
ゴム人間Mr. Fantasticこと主人公のReedは、自分んちで、宇宙線を人工的に発生させる装置を、それも自家用サウナ並の大きさで作ってしまう。それ、とてつもなくすごくない? それはともかく、その装置を自分で人体実験したところ、失敗して右半身がだるだるのゴムみたいに伸びっぱなしになってしまう。これははっきり言って大ピンチ、こんな状態で残りの人生過ごすなんて嫌だなあとか思っていたら、特に説明もないまま回復している。
火焔人間になって飛び回るHuman Torchは、実験中、調子に乗って、装置の限界を越えた温度まで燃え上がる。姉の透明女に「体温が超新星爆発並になってたわよ!」とか叱られるのだが、実際には超新星爆発は起こらず、装置の壁が溶けただけで済む。よかったね。
作り手の想像力は、Invisible WomanことSusanが、透明になるとき、「服は透けないから脱がないとね!」的なところまでは届いている。実際、白昼の公道で全部脱ぎ捨てて全裸になるシーンが2回もある。ところが、悪者につかまって氷結ゴムにされているReedを透明になって助けに来たとき、姿を表すとなぜかスーツ(F4スーツ)を着ている。あれ? (最後の方、うつらうつらしながら観てたので説明があったかも知れないが・・・)
一番ひどいのは物体The ThingことBenで、彼は他の連中とは違い、宇宙線を直接大量に浴びたために、体の組成自体が完全に変化してしまって、全身にひび割れのある岩石男みたいになっている。他の連中の能力が全部CGIで表現されているのに対して、この人だけ着ぐるみである。婚約者には逃げられ、指が太すぎてフォークとか持てないし、そもそも力が強すぎていろんなものを破壊してしまう。この先待ちうける運命はかなり過酷であろうことが予想される。
しかし本当にひどいのは彼の運命ではなく、救済のありかたの方だ。Benはバーで盲目の黒人女Aliciaに出会い、Aliciaは手探りでBenの顔をぺたぺたと触って、なぜかよくわからんがBenに好意を抱く。要するに、外見がひどいことになっている存在に自分を受け入れさせるのに盲人を使う、というのは考えられる限り最悪のプロットだと思う。
悪役のDr. Doomは、ちょっと何がしたいのかわからない。会社は倒産するわ、女はとられるわでヤケになったってことでいいのかな。結局最後、こいつをみんなの力をあわせて倒すシーンがほぼ唯一の見せ場だったらしいのだが、半分寝てたんであんまりよくわからんかった。戻って観る気もしないのでそのままで。