「0をかけると0になる」の証明
『経済学のための数学入門』例2.1.1(1)(63頁)。
任意の実数 について、 である。
0というのは、実数集合における加法の単位元です(単位元についてはこちら)。単位元なので、定義上「任意の実数に0を足しても変わらない」という性質を持っています。
みたいに。
他方、「任意の実数に0をかけると0になる」という性質もあることを、我々は小学校のときから知っています。
みたいに。
でも、この性質は加法の単位元であるということから直接出てくるわけではないので、証明してやらないといけません。証明で使うのは、実数の性質のうち
- 分配律が成り立つ
- 等号の両側に同じ数を足してよい
この2つです。
任意の実数 を用意しましょう。まずは分配律を使います。
右辺の括弧の中に注目です。 は加法の単位元ですから、足しても同じです。なので、 です。だから
となります。真ん中を省いて、
ですね。ここで、「等号の両側に同じ数を足してよい」を使います。何を足すかというと、 の加法の逆元 です(逆元についてはこちら)。
加法の逆元ですから、足すと加法の単位元、つまり になってしまいます。
さて は加法の単位元ですから、足しても同じです。というわけで、
となって、どんな数にでも、0をかけたら0になる、ということが証明されました。