John Moore監督『Behind Enemy Lines』(邦題:エネミー・ライン)

エネミー・ライン (Blu-ray Disc)

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2001年の米国映画。というか、米軍自慰映画。
毎日毎日偵察飛行ばかり。こんなんだったらもうやめてやるー! とか言ってた戦闘機乗りが、撃墜されて敵地の真っ只中に着陸。NATOの平和維持活動の方針を無視して助けに来てくれた米軍提督といっしょにセルビア人をぶち殺しまくり、やっぱ海軍いいっすねー、と万歳三唱する話。よくもまあ、ここまで恥知らずなプロットが作れるなと感心しました。
F/A-18Fの発艦シーン、着弾した機からの脱出シーンは、テクニカルな描写があってなかなかよかった。他方で、話の大半を占める、敵地の中を突っ切って救出ポイントまで到達する、という部分に、何の専門技術もなくて、主人公はひたすら広いところを走っているだけ。お前どこの素人だよ。
まず、森の中では、見晴らしのいい、開けたところを選んで走るだけ。そりゃ見つかるよね。それでもなんとか逃げきって森を出ると、広大なダムが。その斜面によっこいしょと腰掛けて、水を飲む主人公。もちろん360度、どこからでも狙ってくれっていう意味だよね。もちろん相手の弾は当たらないことになってるので、斜面を滑り降りてそこも脱出。また懲りずに景色最高の橋の上を走っていると、向こうから車が。米国軍人たるもの、相手が何者か確認するまでもなく「乗せてくれ」でOK。もちろん、乗っているのはIce Cube大好きのラップ小僧なので問題なし。よし、お前の名前は今日からアイス・キューブだ。東欧人の名前は発音しにくいからな。省略してアイスでいいよな。
さて車は街に到着。ところが市街戦の真っ最中。それであれこれあって、爆弾に吹き飛ばされたかに見える主人公。ところが制服を着替えて、敵兵にまぎれて逃げることに成功。銀行強盗みたいなニット帽もかぶってるからばれるわけねえwww 戦車に乗った敵兵の横をすり抜ける主人公。すり抜けた直後に、なぜかニット帽を脱いで金髪をさらし、挙句に振り向いて見せる主人公。見たか、これが米軍魂だ!
もしかしたら見せ場に成り得たかもしれないのは、逃げる主人公が、セルビア軍に虐殺された民間人の死体の山というか死体の沼みたいなところに頭から突っ込むシーン。ところが、見せられるのは極度に漂白された演出で、要するに泥水みたいなところにマネキン的なものが置いてあるだけ。蠅の一匹もいない。主人公はその死体の群れの中に、かなりの時間頭を突っ込んでいるので、本当ならものすごい臭いのはず・・・だが、全く気にする様子なし。ああ、米軍魂だから大丈夫ということ? 死体の群れの上を這って進む主人公。本当なら、皮がズルリ、肉がドロリ、となるはずのところだが、そういうのはなし。マネキンだからしょうがないか。
というわけで、今日の教訓。銃弾が炸裂する壁を撮るときに、手持ちカメラを小刻みに揺らすのはもうやめようね。ダサいから。