森田芳光監督『39――刑法第三十九条』

39-刑法第三十九条- [DVD]

39-刑法第三十九条- [DVD]

どうみても全員があれです。本当にありが(ry
以下激しくネタバレ。
堤真一は多重人格を装って無罪になろうとしている詐病者(らしいの)だが、まさか刑事から弁護士、検事、鑑定人に至るまで、みんながみんなこんなんだとは思っていなかっただろう。内心この世界やべえとか舌打ちしたことと思われる。
映像はずっと陰気で、怖い。特に幼女の死体はかなりショッキングな映像。
ただまあ、プロットは変なとこ多数。まずタイトルの「第」が気になる、というのは置いといても、なんで多重人格なのか、という疑問は残る。どうして分裂病にしとかなかったのか。また、病気を「演じる」のが詐病であるにもかかわらず、堤真一演じる柴田の職業は役者。しかも、プラン開始後に始めている。「演じているかもしれないな」と疑ってもらいたいかのようだ。
39条に対する問題提起は、作品全体としてはちょっと不明確。結局最後には、詐病がばれて、裁判から39条の適用は論点としては除外される。しかしそれは、心神が喪失も耗弱もしていないから適用がないということになっただけの話であって、39条自体は無傷のまま。心神が喪失か耗弱かしているのに、39条の適用がない、という展開になれば、39条に対する問題提起があったことになったはずだが。
ただクライマックスで、堤真一が(多重人格は詐病だったとしても)やはり精神を病んでいる可能性が示唆されている(裁判官が裸に見える)。もしそうだとすれば、本当は心神が喪失か耗弱かしているのに、そうではないと判断されて、39条の適用がなくなってしまった、という皮肉な事態なわけだが、それがどういう問題を条文に対して提起しているのかは、やっぱりよくわからない。
まあ、監督自身があんまり考えてないんだろうなという感じ。しかし、東京から新潟から門司まで、鑑定人てあんなに飛び回る職業なの? あと、「多重人格が扱われる初めての裁判」で、あんな赤っ恥かかされて(つまり詐病にまんまとひっかかったと、よりによって自分の弟子に公衆の面前でばらされて)、あの教授、このあと大丈夫かなとか。