矢野龍王『極限推理コロシアム』
- 作者: 矢野龍王
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/06
- メディア: 新書
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ああいう状況では、まず相手側への自己紹介で、全部偽名を伝える(あるいは入れ替える)というのが合理的だろうと思う――が、著者の頭にはかすりもしなかったのだろう。
真相については、館が隣接しているというのは、「窓がない」という設定からミエミエ(ほとんど文法的必然性とでもいうべき)。で、相手側の犯人がこっちにいて、こっち側の犯人が相手側にいる、ということだろうと途中でわかったのだが、著者が考えたのは二人とも相手側にいるというもの。まあ、どっちでもいい(ヒントの件は噴飯ものだが)。
囚人のジレンマの話が出てくるが、
別々の房に入っている二人の囚人が、看守から「本当のことを自白してくれたら刑を軽くしてあげよう」と話を持ちかけられる。それぞれの囚人はもう一人の囚人の行動が気になって仕方がない。もう一人の囚人が自白しないとわかっていれば、自分も自白しない選択肢をとるべきである。そうすれば二人とも無罪放免となるためだ。けれども、もう一人の囚人が自白しない保証はどこにもない。もし相手が自白するという行動をとってしまった場合、自分にだけ重い罪が科せられる羽目になる。囚人は結局、最悪の事態になることを恐れるあまりに自白してしまう・・・・・・これが囚人のジレンマの結末だ。
全然違うぞおい(笑)。囚人のジレンマは相手の合理性を想定するもので、上の設定だと、相手も合理的なら、二人とも黙秘するのが合理的。だからジレンマなんてどこにもない。囚人のジレンマを構成するには、「二人とも黙秘」よりも「自分だけ自白」の方が、自分にとって得になるという設定にしないとね。まあどうでもいいけど。