石渡嶺司『最高学府はバカだらけ』

最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情 (光文社新書)

最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情 (光文社新書)

著者の所謂「化学反応」というのがどういうものなのか、ほぼそれだけを楽しみに(我慢して)終章まで読んだが、見事になんにも書いてない。バカバカ言ってるだけで、現実の学生を知っているようには全然見えない。大学が何をやっているか、何をやっていないか、についてはそれなりに取材しているのだろうが、学生が何を求め、どう幻滅し、何を諦め、どう立ち直るのか、といった観点からの議論がない。
大学生を経験した人なら誰でも知っていることだと思うのだけど、大学というのはハコであり、授業やサークルや就職活動やなんやかんやがいろいろつまっていて、学生はその中でいろいろやりながら成長するんです。当局の個々の取り組みなんて、学生の成長過程全体から見たらほとんど影響はない。あんなの飾りです、偉い人にはそれがわからんのですよ、というのがひとまずの正解であり、偉い人がわからんのは立場上しかたがないにしても、仮にも学生のことをバカバカ言っている著者までが、一緒になってわかっていないというのは、これはもうどうしようもないねとしかいいようがない。