フレーゲの、補完の必要性による関数の特徴づけ

フレーゲ著作集〈4〉哲学論集

フレーゲ著作集〈4〉哲学論集

「関数と概念」より

項は、関数の一部ではなく、関数と共に一つの完結した全体を形成するのだということを示すことが、私には大事なことなのであります。といいますのは、関数は、それだけでは非完結的で補完を要し(ergänzungsbedürftig)、つまりは、不飽和(ungesättigt)と呼ばれるべきだろうからです。またそのことによって関数は、数とは根本から区別されるのであります。

「関数とは何か」より

そしていまや我々は、それによって関数が数から区別されるその当の事に思い到る。すなわち、この‘sin'は、数字による補完を必要とするが、しかし当の数字は当の関数の表記には属さない。次のことが一般的に当てはまる。すなわち、関数の記号は不飽和であって、数字による補完を必要とする。その場合この数字を我々は項記号(Argumentzeichen) と呼ぶ。我々はこうしたことをまた、根記号、対数記号の場合にも認めるのである。関数記号は、数字のように、それだけで等式の一辺に現れることはできず、一つの数を表示ないし暗示する記号によって補完されることによってのみ[等式中に]現れうるのである。さて、一つの関数記号と一つの数字とからなる、‘sin1'、‘√1'、‘l1' [log1のこと]のような結合は、何を意味するのか。どれも一つの数を意味するのである。かくて我々は、不飽和な部分が他によって補完されることにより、二つの異質な部分から合成されている数記号を手に入れるのである。
この補完の必要性を、例えば‘sin()'ないし‘()2+3()'のように、空の括弧によって目に見えるようにすることができる。これが実際は事態に最もよく適しており、項記号を関数記号の部分と見なすことによって生ずる混乱を阻止するのに最も適しているにもかかわらず、この表記法は多分採用されないであろう。