社会学的社会学入門(に向けて)

4月から非常勤で「社会学」を教えるので、最近、社会学入門というのはどんなものであるべきかということを考えている。
それで思ったのは、自分が受けてきた授業、あるいは社会学の入門書を称する本は、なんといっていいのかうまい言葉が見つからないが、まあいわば哲学的な社会学入門であるような気がする今日この頃なのだ。
それらに完全に欠けているのは、社会学も含めて学問というのは人間による社会的活動であり、社会学の知見というのはどこか空の遠くのイデア界に鎮座ましましているのではなくて、日々、どこかで、具体的な事象として、文字として印刷されて頒布され、また口頭で発表されたりしているという、まさしく社会学に関する社会学的な知見だ。
そこで、社会学者というのはどこに何人くらいいる人のことなのか、社会学の知見というのはどこで発表されるているのか、社会学者になるにはどんなコースを進めばいいのか、といったことを含めた入門講義をやってみたらどうかと思うに至った。社会学的な社会学入門というわけだ。
具体的には、日本社会学会というのがあり、『社会学評論』というのがあり、そのほかにも、○○社会学会とかいろいろあり、それぞれ雑誌を出しており、○人くらい会員がいて、論文を投稿して査読に通ったら掲載され、でも査読なしでも載ることがあり、あと年に1〜2回大会が開かれてみんなが集まって研究を発表し、というわけで原則としては新しい社会学的知見は学会誌や大会報告でこの世に生まれるもので、ただ社会学ではまだ「論文より著書」みたいな雰囲気がなきにしもあらずで、・・・・・・みたいなことを、(日本の)社会学入門として教えることには、「むかしコントという人がsociologieという言葉をつくりました」「ルーマンは社会的システムの要素は行為でなくてコミュニケイションだといいました」とかいったことを教えるのに勝るとも劣らない価値があると思うのである。
問題は、こういう話は、我々くらいになると結構面白いと思う(思うよね?)のに対して、学部1年生とかが面白いと思うかどうかなのだがそこはやはり工夫のしどころということかもしれない。ただ少なくとも、学部の頃、社会学入門の講義や本が面白いと思ったことは、えー私は一度もないのではある。
ちょっと話がかわるかもしれないが、いま見田さんの『社会学入門』読んでて痛烈に思うのは、これを読んでなにか思うところがあるのはすでに入門している人であって、この本は結構面白いけど「再入門書」だよなあということである。入門書としてはどうなのかなと思う。
まあいつもの通りまとまらんのではあるが、もう少し、社会学社会学的入門の可能性について考えてみたいと思う。