中河与一『天の夕顔』

天の夕顔 (新潮文庫)

天の夕顔 (新潮文庫)

風呂で。
母校の丸亀高校の卒業生で一番有名なのはおそらく女子アナの中野美奈子だろう。えーと・・・それはともかく、丸高には中河与一賞という文藝賞があった。『天の夕顔』という本を書いた人、と教わり、そのうち読もうと思って今まで読まないできたが、ようやく読んだ。
人妻との結局地上では果たされない(ことによってある意味果たされた)愛、という話。まあなんというか。
保田與重郎の解説がキモい件。

この小説の愛の情緒と恋愛の思想と人生の態度を喜び、この小説の中の人々の愛に対する節度と宗教的な態度に共感する若い人々が多いという事実に、私は一つの安堵感を今日と次代に対していだくほどである。(中略)『天の夕顔』をもって、私は自分の安堵感の現証とするばかりでなく、この小説をさらにひろく世の青年子女にすすめ、また母や父兄がその子女にすすめるのが実に正しいということを言いたいのである。この小説は人間の文化が最もけだかく美しいものを念願していた時代と人々のおもいを伝え、その時代と人々にあった愛の情緒と思想を、一つの行儀作法や躾として次の代の子女に教えるからである。
(p. 99-100)

「わたくし」と結婚した女は「肋膜」(=結核)になった挙句、離婚されているわけだが。