加賀乙彦『死刑囚の記録』

死刑囚の記録 (中公新書 (565))

死刑囚の記録 (中公新書 (565))

なお本書に挙げた多くの死刑囚の、その後の運命について知りたく、法務省に問い合せたところ、刑の執行は秘密事項で教えられないとのことであった。裁判を公開の場でおこない、おおっぴらに断罪しておきながら、断罪の結果を国民の目から隠蔽する、この不合理も、つきつめてみれば、国が死刑という殺人制度を恥じているからではなかろうか。
(p. 231)

今回(12月7日)鳩山法相の下で、氏名と犯罪事実概要と執行場所の公表を伴って死刑が執行されるようになった。我々が茶の間で楽しむ死刑事案の裁判ゲームと、死刑判決が下された際のカタルシスは、このゲームが判決をもってエンディングとするという、〈きれいな終わり方〉のものだという前提に大きく条件付けられているように思う。上記公表化は、このゲームに執行という新たなステージを追加することになるだろうか。その際にエンディングにおけるカタルシスをまだ得られるだろうか。いずれにしても死刑ゲームが完全なものになるには、本書や類書に断片的に書かれているような、判決から執行までの間の過程もやはり、何らかの形で公表すべきだろうとは思う。
ところで無知をさらして恥ずかしいのだけど、無期刑って刑の執行の期間という意味では終身刑と同義なのですね。仮釈放されても死ぬまで刑は続くのか(つまり仮釈放というのは監獄の外で刑を続行するということ)。