ラドクリフブラウン「宗教と社会」

  • A. R. Radcliffe-Brown, 1945, "Religion and Society," The Henry Myers Lecture, reprinted in: A. R. Radcliffe-Brown, 1952, Structure and Function in Primitive Society, Cohen & West, pp. 153-177

37年前(1908年)、アンダマン島民についての論文(刊行されたのは1922年)で、儀礼や儀式の社会的機能についての一般理論を簡単に定式化しました。今日お話しする内容もこの理論が基礎になっています。できるだけ簡単にご紹介しましょう。これは、複数の人間の間の社会生活に秩序があるためには、社会の成員の心の中に、他人との関係において自分の行動を制御するような感情が存在していなければならないという理論です。儀礼というのは、一定の感情を一定の形で象徴的に表現したものだと見ることができます。だから、社会の構成の前提となっている感情を統制し、維持し、世代間で伝達するという効果を儀礼が持っている場合、その場合に限り、儀礼には特定の社会的機能があるということができます。宗教というのはどこでも、我々自身の外部にある力、霊的な力とか道徳的な力と呼ぶべきものに自分たちは依存しているんだという感覚を表現したものである、という一般的な定式をあえて提出したわけです。
(p. 157)