西田幾多郎『哲学の根本問題』の書込み

ずっと前に東大本郷の正門を出てちょっと右に行ったところにある古本屋で、西田幾多郎『哲学の根本問題(行為の世界)』(岩波全書,昭和16年12月10日12刷,定価80銭)というまさに古本という感じの本を買ったのだが、さっき見つけてパラパラしていたら、奥付の前のページに元の持ち主の書込みを見つけた。記念にここに書き写しておく。

19.8.7 ― 19.8.18
本書ノ中ノ
私ト汝、現実ノ具体的構造ニヨリ、或ハ人生観、世界観ニ得ル所アラバ出征ヲ前ニスル吾ニトッテ幸甚ナリ。
ヨクヨク熟読スベシ。
工場ニテ此書読了。
漠然トシテ其意ヲ充分把握シ難キモ、現実ノ浮世ヲ真向ヨリ説キ明カサントスル其ノ意気ヤ壮トスベシ。
ゲニ歴史ノ変革ハ世界ノ悲劇ナリ。

この人は結局出征したのだろうか。生き抜くことができただろうか。