サイモンほか『行政学』第一章「行政とは何か」
Herbert A.Simon, Donald W. Smithburg and Victor A. Thompson, 1950, Public Administration, Alfred A. Knopf, Chapter 1 "What is Public Administration?" pp. 3-24
三谷メモ
今回用があるのは第3章だが、序文に「定義が大切だからちゃんと読んでね」と書いてあるのでとりあえず最初から読む。
イントロ
- 1人では実現できない目標の実現を目指して複数人が協力することが、広義の経営(administration)だよ。
経営とはどんなものか
- 目的実現に至るまでの手段選択等の行動パターンが狭義の経営だよ。
公式組織とはどんなものか
- 各人に役割や義務が計画的に割り当てられた協働システムが公式組織(formal organization)だよ。
経営の普遍性
- 意識してなくても経営に参加しているよ。他人と協力するときは大抵何でも経営だよ。
公的経営=行政
- 本書の研究対象は公的な(政府に関わる)経営、つまり行政だよ。
立法と司法を除外する理由
- 立法も司法も経営だけど、それぞれ固有の問題があって扱いきれないから本書の対象からは外すよ。でもどちらも行政にとっては環境で、影響を与えてくるからその点は後で論じるよ。
政府の経営と非政府の経営
- 政府か非政府(私企業)かの違いよりも、規模の大小の違いの方が大きいよ。たとえば鉄道会社が国有化されたても、走ってる電車は一緒だし車掌さんも一緒だよ。経営の公私による違いは、質的な違いというよりは程度の違いだよ。あと、人の見る目が変わるというのもあるかな、というくらいだよ。
経営の成長
- 米国の成立当時と現在とを較べると、行政の管掌範囲はすごく広がっているよ。
成長した理由
- 行政の拡大を、社会主義化を目指す人々の陰謀だと言っている人たちは、昔のいい面と今の悪い面しか見ない牧歌主義者だよ。
- 行政の担当範囲が拡大した原因は、一つには技術革新だよ(たとえば自動車の発明で道路・交通行政とかが必要になったよ)。もう一つは人々の生活の専門特化による相互依存の強化だよ(相互依存の管理が必要になるよ)。
人数と費用の成長
- 現在、10人に1人が公務員だし、この100年ちょっとで政府予算は1500倍になっているよ。
課業の多様性の成長
- 19世紀前半のジャクソン大統領は公務員は専門家でなくてもできるし、素人のほうがいいと言っていたけど、今では、ありとあらゆる専門家が政府には必要だよ。
経営の研究
- 規模が大きくなってくると、効率性を求めるようになったよ。まずは不正とかの排除だよ。
任命権という竜を殺す
- 猟官制(情実任用)から能力制(採用試験)になってきたよ(ペンドルトン法とか)。
目標は効率性
- 行政の効率性を求める理論家たちは、政策決定は立法の仕事で、行政の仕事はその可能な限り効率的な実行だと考えたよ。
行政学理論の目標
- 行政学の目標は、(1)組織内での人間の行動や組織自体の行動の理解と、(2)組織を効率化する方法の実践的提言、の二つだよ。当たり前だけど(1)があって初めて(2)ができるよ。
組織行動の研究
- 研究者の持っている価値にかかわらず行動研究は可能だし、どんな価値の効率的実現もそれを基礎にしないといけないよ。難しいけど、事実と価値の区別はしっかりしないといけないよ。
「よい実践」についての提言
- どうしていきなり実践規則を提言したのでは駄目で、まず行動の客観的研究が必要かというと、それには三つの理由があるよ。(1)規則を適用するにはまず状況の理解が必要だからだよ。(2)規則を適用するにはまず適用者に一定の能力がないといけないけど、それには規則それ自体よりも、どうしてそんな規則が必要かを理解するのが先決だからだよ。(3)どんな実践規則がいいかは、価値観によって変わってくるからだよ。
- 提言をするには、提言者の抱いている価値が共有されているか、正しいかのどちらかでないといけないよ。プラトンは哲学者を王様にすることで国家が正しい価値を追求できるといったけど、立憲国家ではどんな価値を追求すべきか自体を共同体が決定しないといけないよ。
- 本書は行動研究に徹するよ。文体は記述的か、条件法のどちらかだよ。これなら価値観がどんなものであっても研究成果を使えるよ。
経営は操縦
- 経営というのは他人を操縦するものだから、個人の尊厳という価値観と対立するよ。ホーソーングループの人たちは労働者の尊厳を守れば経営の効率性も上がると予定調和的なことを言っているけどそれは間違いだよ。