シリーズ本日の誤訳(3)

公式組織の機能とその派生的問題 上巻

公式組織の機能とその派生的問題 上巻

【誤訳】

そうした古いとらえ方は、公式的な構造や公式的な期待、成員として使いものになるための条件や管理の仕方といったことを事細かにとり決めてしまうならば、システムが個人的な動機の違いについて高度に無関心でいることはできなくなってしまうのではないか、という問題を無視している。(p. 144)

【原文】

Außerdem übergeht die alte Auffassung die Frage, ob ein System durch geschickte Anordnung seiner Formalstruktur, seiner formalen Erwartungen, Brauchbarkeitsbedingungen und Kontrollen, nicht in hohem Maße gegen Unterschiede der individuellen Motivation indifferent werden kann.

【正訳】

また、自らの公式構造、公式期待、満足化条件、制御をうまく配列することで、システムが個々人の動機の違いに対してかなりの程度まで無差別化しうるという点も、旧来の捉え方では見えてこない。

【補足】
「〜できないだろうかという問いが見落とされている」ということは、本当は「できる」ということ。動機を成員動機に一本化することで各人の動機の違いを無視できるようになるというのは本章の結論的テーゼなわけで、それを否定してどうするのか。あとBrauchbarkeitは、H. A. Simonの「満足化(satisficing)」の独訳。ルーマンの第二論文「Kann die Verwaltung wirtschaftlich handeln?」(1960)を読めばわかるよ(私訳あるよ)。

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【誤訳】

ホワイトWhyte [1951]の指向様式についての説明を参照せよ。(p. 151 註42)

【原文】

Vgl. den richtungweisenden Aufsatz von Whyte [1951].

【正訳】

その指針となった論文Whyte [1951]を参照せよ。

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