日本の弓術

日本の弓術 (岩波文庫)

日本の弓術 (岩波文庫)

今日は朝から外出デー。まずは電車内でこれを読了。何を隠そう、ぼくはむかし弓を引いていたことがあるのだ。最初は、力を入れるな、的を狙うな、といわれるのに対して、力を入れないでどうしたら弓が引けるのか、的前に立つのに的を狙わないでどうするのか、といちいち質問していた留学ドイツ人哲学者の著者が、次第にその意味するところを感得し、最終的に師範より五段を与えられる体験談的弓道論。有名なエピソード、

先生は編針のように細長い一本の蚊取線香に火をともして、それを垜の中ほどにある的の前の砂に立てた。それから私たちは射る場所へ来た。先生は光をまともに受けて立っているので、まばゆいほど明るく見える。しかし的はまっ暗なところにあり、蚊取線香の微かに光る一点は非常に小さいので、なかなかそのありかが分からないくらいである。先生は先刻から一語も発せずに、自分の弓と二本の矢を執った。第一の矢が射られた。発止という音で、命中したことが分かった。第二の矢も音を立てて打ちこまれた。先生は私を促して、射られた日本の矢をあらためさせた。第一の矢はみごと的のまん中に立ち、第二の矢は第一の矢の筈に中たってそれを二つに割いていた。

というのが載っているが、型ができていて精神統一していれば、目を瞑って射ても、甲矢が的中するというのはそんなに難しいことでないし、乙矢が甲矢の筈にあたるというのも、この一発勝負でやって見せるところがこの師範のすごいところだが、そんなに珍しいことではないと思う。
・・・などとえらそうに書けるほどぼくはうまくないので、この辺で。