はじめての分析哲学

はじめての分析哲学

はじめての分析哲学

II章「『経験論の二つのドグマ』――論理実証主義vsプラグマティズム」まで。

ところで、「言語と、言語抜きの世界とを分離できない」というのは、一見奇妙な主張に響くかもしれません。と申しますのも、語「ビール」はあくまで言葉であって、それこそ画に書いた餅の類にすぎず、実物のビールとはまるで別もの、つまり単なる音声・紙上のインクの染みでしかないからであります。しかし、であります。そのように単なる語を実物のビールと区別しているとき、我々は既に“実物の「ビール」”という言語を用いているのであります。つまり、単なる語ではない実物のビールというのも、実はまだ言語の網が被さった限りでの世界の一部なのでありまして、決して言われるような「言語を差し引いた残りの世界」ではありません。(p. 161-2)

それは「語『ビール』と『実物のビール』とは別もの」と言葉で書いているからではないのでしょうか。