参議院議員の定数不均衡訴訟判例(平成18年)その2
(その1にもどる)
裁判官那須弘平の補足意見は,次のとおりである。
私は,「本件選挙までの間に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものと断ずることはできず,したがって,本件選挙当時において,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない」とする多数意見に賛成するものである。しかし,若干異なる視点からの検討が可能でかつ必要であると考えるので,以下のとおり補足して意見を述べる。
(多数意見の判断の枠組み)
1 多数意見は「国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が損なわれることになっても,憲法に違反するとはいえない」,「公職選挙法が採用した参議院議員についての選挙制度の仕組みが国会にゆだねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものである以上,その結果として各選挙区に配分された議員定数とそれぞれの選挙区の選挙人数又は人口との比率に較差が生じ,そのために選挙区間における選挙人の投票価値の平等がそれだけ損なわれることとなったとしても,これをもって直ちに上記の議員定数の定めが憲法の定めに違反して選挙権の平等を侵害したものとすることはできない」との一般論を前提として,「議員定数配分規定の制定又は改正の結果,上記のような選挙制度の仕組みの下において投票価値の著しい不平等状態を生じさせたこと,あるいは,その後の人口の変動が上記のような不平等状態を生じさせ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限に係るものであることを考慮しても,その許される限界を超えると判断される場合に,初めて議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解する」との判断枠組みを示しているが,この判断の枠組みについても賛同する。
(投票価値に関する選挙区と比例代表との一体的評価)
2 問題は,裁量権の範囲を超えていないとすることの理由付けにある。
本件においては,基本的に選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が本件選挙当時1対5.13であったことに着目し,これを前提とした議論が展開されている。しかし,本件選挙における1票の投票価値に1対5.13の較差があったことを前提とする場合,なお「立法の裁量の範囲を超えるものではない」と言い切ってよいものかどうか,素朴な疑問を感じる。
率直に言って,この数字を動かし難い事実として認める限り,本件選挙が平等原則に違反する違法なものであったという結論に傾くのはごく自然なことだと考える。多数意見に対し5名の反対意見が出されているのも,この数字を無視し得ないとの判断が根底にあるからではないか。
他方で,しかし,ここで問題とされているのは,本件選挙において各選挙人が投じた票の価値に軽重があって,その較差が憲法上許される範囲を超えているのではないかという点であることを考えると,果たして選挙区間における投票価値の最大較差1対5.13という数字を見るだけで足りるのかという疑問が生じる。
参議院議員選挙において,それぞれの選挙人は,選挙区の候補者に1票を投じた同じ機会に比例代表の候補者又はその所属する政党にも1票を投じている。そのいずれも参議院を構成する議員を選ぶ投票であることには相違がない。換言すれば,選挙人は,選挙区選出議員を選ぶのに1票,比例代表選出議員を選ぶのに1票を投じ,この2つの投票行動が相まって各選挙人の政治的意思を表明するものとなっている。制度的にみても,選挙区選挙と比例代表選挙は,決して無関係な2個の選挙がたまたま同時に行われたということではなく,被選挙人の定数,選出母体となる区域等についてそれなりの関係付けをし,一体のものとして設計され運用されているものである。当選した候補者は,選挙区から選出された者も,比例代表として選出された者も,参議院議員の構成員として何らの区別なく立法活動に携わる制度となっている。
したがって,私は,参議院議員選挙の1票の投票価値を論じるときは,選挙区だけではなく比例代表の部分をも取り込んで一体として検討する必要があると考える。
(投票価値の算定)
3 上記の視点から本件選挙における選挙区と比例代表の双方を一体のものとして投票価値を算定する場合,比例代表の部分は全国を一つの単位として候補者の中から一定数を選ぶ制度であるから,選挙人がどこに居住するかで差がないことが明らかである。したがって,全体としての投票価値の較差は,投票価値が均一な比例代表を合わせて一体のものとして計算することにより,選挙区だけの較差に比べ,相当程度緩和されることになる。
これを具体的な数値として表現するため,次のような考え方に立って計算すると,最も投票価値の低い東京都を1とした場合,最大較差は鳥取県の2.89という数値(概数)が導かれる。
(計算方法)
(1)鳥取県選挙区では,選挙区選出議員の選挙に関して,定数2人を選挙人数49万2436人(本件選挙当時のもの)が選出するから,同選挙区の選挙人1人が行使する1票の価値(結果に対する影響力)は,前者を後者で割ったものとして把握できる。(2)比例代表選出議員の選挙については,全国の定数96人を,全国の全選挙人1億0258万8411人(在外投票を含む。)が選出するから,1票の価値は,全国いずれの選挙人についても,前者を後者で割ったものとして把握できる。(3)鳥取県選挙区の選挙人が本件選挙当時に行使した合計2票の価値は,上記(1)及び(2)の合計として算出できる。(4)同様に,東京都選挙区の選挙人が行使した合計2票の価値を算出し,これを鳥取県選挙区のそれと比較すると,鳥取県選挙区の選挙人1人が持つ投票価値は,東京都選挙区の2.89倍となる。
(較差1対2.89の評価)
4 この1対2.89という較差をどう評価するかについては両様の考え方があり得よう。
「このような視点から計算してもなお1対2.89の較差があるのであるから,やはり憲法の下での平等原則に反する」と見るか,それとも「1対2.89ならその較差は憲法上許容される範囲内に収まっている」と見るかの問題である。
私は,以下の理由で,本件定数配分については,違憲性の問題を完全に払拭できる状態とまではいえず,違憲性が問題となる領域に近接するが,なお憲法の許容する範囲内に踏みとどまっていると評価してよいと考える。
(1)同じ国民1人当たりの投票価値が,選挙区ないし居住する場所を異にすることで不平等となることは極力回避することが望ましいが,選挙区選挙に関する限り各選挙区の地理的・歴史的状況,人口変化の動向等により完全に平等ということは実現困難であり,また,人口の変化が立法当局に把握された後も,これを踏まえた定数の是正措置を実行に移すまでには,国会における審議期間を含め相当程度の時間を必要とすること,選挙区の投票価値の不均衡が比例代表を含めた全体としての選挙における投票価値に影響する結果として,全体の投票価値の較差の存在もある程度は容認せざるを得ないことから,較差が1対2に至らない場合には,「1人が2票以上の投票権を有する」という事態に当たらないこともあり,原則として憲法の許容する裁量権の範囲内の問題であると解する。
これに対し,投票価値の較差が1対2を超える場合には,上記「1人2票」の問題が生じ,憲法上の平等原則との関係をどう説明するか,慎重な検討が必要となる。
(2)参議院選挙区選出議員の選挙における投票価値の較差が,基本的に都道府県を単位とし,かつ憲法の定める半数改選制と密接な関係を持つ偶数配分制に由来することは明らかであるところ,都道府県を単位とする点については,地方の住民を代表する議員を中央に送り,その声を政治に反映させたいという住民の気持ちは自然の欲求であって,これを考慮した制度とすることに合理性を認めることができ,偶数配分制についても,奇数配分制を一部採用した場合の半数改選という憲法上の要請との折り合いをどうつけるかについて,制度設計上技術的な難しさが予想される状況の下では,一定の合理性があると認めるべきである。
都道府県を選挙区の単位とし,かつ偶数配分制によって選挙区の定数を定める場合には,1対2未満の場合は原則として憲法の容認する裁量権の範囲内にあると解すべきことは前述のとおりであるが,これを超えた場合にどこまでなら許され,どこからは違憲となるかは,問題となる選挙の置かれた具体的な状況によって異なり,一義的に明確な数字をもって決めかねる問題である。一般的には,是正措置を執るための時間との相関関係で,短期間に是正措置を講じた場合には「当面の応急措置」でも足りるが,時間が長く掛かればそれだけ較差を縮小させるための抜本的な対応が要請されると考えるべきであろう。
いずれにしても,比例代表を含めた全体の投票価値の較差が1対2を大きく超えて拡大すれば,違憲状態と判断される可能性も格段に高くなると考える。
(3)本件参議院選挙については,平成16年大法廷判決から6か月しか経たない時期の問題であったこと,その間に参議院は,必ずしも十分とは言いかねるが,しかし「参議院議員選挙の定数較差問題に関する協議会」を発足させる等,較差の是正に向けて具体的で真摯な対応を執ったことがうかがわれ,これが平成18年6
月の4増4減の実現につながったものであること,そして,なおこの是正措置は「当面」のものとされ,更に道州制の採用とこれに基づく選挙区の見直し等,抜本的な制度改革も視野に入れた動きが見られないではないこと等を考慮すれば,本件選挙については,これを憲法の許容する立法の裁量権の範囲内に辛うじて踏みとどまったものと評価することができる。
私は,以上のような観点から,選挙区のみに着目した場合に前記のような最大較差が生じていたとしても,本件定数配分規定が本件選挙当時に憲法に違反するに至っていたということはできないとする多数意見を採ることが妥当であると考える。
裁判官横尾和子の反対意見は,次のとおりである。
私は,参議院選挙区選出議員の各選挙区の議員定数は,配当基数(総人口を選挙区選出議員の総定数で除して計算される基準人数をもって,各選挙区の人口を除したもの)が2以上の選挙区相互間の議員1人当たりの人口較差が最大1対3以上であるときは,憲法14条の規定に反するとするのが相当と考えるものであって,その理由は,平成16年大法廷判決の中の補足意見2の追加補足意見に述べたとおりであるから,これを引用する。
これを本件についてみると,本件選挙の直近の国勢調査である平成12年10月実施の国勢調査結果に基づく人口によれば,配当基数2以上の選挙区間の上記最大較差は,栃木県選挙区(議員1人当たり人口が50万1204人)と東京都選挙区(議員1人当たり人口が150万8013人)との間の1対3.01であることが計算上明らかであるから,本件定数配分規定は,憲法14条の規定に違反するものである。
よって,本件においては,原判決を変更し,事情判決の法理により上告人らの請求を棄却するとともに,主文において本件選挙が違法である旨の宣言をするのが相当であると考える。
裁判官滝井繁男の反対意見は,次のとおりである。
1 憲法47条は,「選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める。」と規定しており,国会はどのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるかを決定する上で一定の裁量を持っている。
私は,選挙制度を定める上で国民の利害や意見を効果的に国政に反映させるためには,議員の数が選挙人の数に比例するという人口比例の原則がその基本になるべきであると考えるが,他方,憲法が国会を衆議院と参議院の両院で構成すべきものとしているのは,それぞれ特色ある機能を発揮することを期待していること,そのため,参議院は衆議院と異なる独自の立場と観点から国政の審議に当たるべきであるとの考えに立ってその構成を定め得ることから,参議院においては,定数を決めるに際して非人口的要素をより柔軟に考慮し得ること,その結果,半数改選制という憲法上の要請もあって,人口比例の原則の持つ意味が衆議院の場合より後退することは許容されると考えるものである。
しかしながら,選挙権は国民主権に直結する極めて重要な権利であって,その内容,すなわち各選挙人の投票価値の平等もまた憲法の要求する原則であると解する以上,参議院の特殊性もその中で考えるべきものであって,その裁量の範囲にはおのずから限度があるといわなければならないのである。そして,この権利の性質に照らし,その裁量権の行使に合理性があるのかは厳密に検討されるべきであって,立法機関が現状をそのまま放置しておくことが裁量の名において是認されるようなことがあってはならないのである。
2 昭和22年参議院議員選挙法は,都道府県を単位とする地方選出議員と全国を通して選出される全国選出議員とに分け,前者については歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有している区域を構成する住民の意見を集約的に反映させる機能を持たせ,全国的視野で選出される後者と併立させることによって参議院が衆議院とは異なる特色を発揮し得るものとした。全国選出議員については,衆議院の構成とはできる限り異質なものとするため,学識経験ともに優れた全国的な有為の人材を簡抜することを主眼とし,職能的知識経験を有する者が選出される可能性を生じるようにすることによって職能代表制の持つ長所を採り入れようとするものであったことを,その提案理由によって知ることができる。これは,全国的視野で非党派的な高い見識を持つ人士を糾合することによって衆議院に対する抑制と補完の機能を果たすという目的の下に,衆議院とは異なる民意の反映方法を選択したものである。そして,地方選出議員については,定数を偶数として最小限を2人とする方針の下に各選挙区の人口に比例する形で偶数の議員数を配分した。この仕組みの下で生じる投票価値の不平等は,参議院に衆議院とは異なる民意を反映させるため,全国選出議員と地方選出議員とを並立させた結果であり,上記の仕組みは公正かつ効果的な代表を選ぶための方法として一定の合理性があったと評価することができる。
しかしながら,私は,上記の仕組みが合理性を持つとされていた理由の相当部分が,今日において失われていると考える。
第1に,前記のような意図の下に採用された全国選出議員の選出方法の合理性の相当部分が,その後比例代表制を採用したことにより失われたことである。比例代表制の採用によって議員の政党化が促進されることは否定し得ないところ,政党化は民主政治の観点から必ずしも排斥すべきものではないにしろ,参議院の全国選出議員は,衆議院において予想される政党間の対立抗争とは距離を置き,二院制の機能を発揮しようとして採用したものであるから,比例代表制の採用によって政党化が進み,それが当初の理念としたものとは異なる色彩を濃くするものとなったといわざるを得ないのである。そして,非党派的見識を持った全国的に有為な人材を糾合するという意図の下に,そのような議員の選出を可能とする全国選出という仕組みを採用した結果,地方選出議員の定数を配分する上で人口比例の原則がある程度後退することを正当化していたのであるが,全国選出制が党派性を持つこととなる比例代表制に変容したため,当初持っていた正当性の根拠はその相当部分を失ったといわざるを得ないのである。
次に,二院制の下で,参議院議員の選出方法を衆議院議員のそれと異なることにその価値を求める以上,その合理性はその時の衆議院議員の選挙方法との比較において検討されなければならないことである。
ところが,衆議院議員の選出については,その後,小選挙区比例代表並立制が導入され,小選挙区選出議員選挙において各都道府県に1選挙区を配分した上で残余を人口比例原則に従って配分することとしたのである。これは衆議院議員に都道府県代表的性格を加味したものともいい得るのである。また,衆議院議員選挙にブロック比例代表制を導入したことによって参議院において比例代表選出議員の選挙の持つ独自性が希釈されることとなったことも否定し得ないのである。
このように参議院選挙の仕組みは,制定当初衆議院議員選出方法との対比において独自性を持たせるものとして合理性を持つとされた前提の幾つかが失われ,選出方法における独自性が希薄になって,衆議院と異なる民意を反映させるという実体を失いつつあるものといわざるを得ないのである。
さらに,参議院議員選挙法制定時には地方選出議員を地域代表的な性格を持つものとして構築されたものと考えられるが,その後の交通通信事情の著しい変化や生活態様の変容をみるとき,都道府県の持つ人的,地理的,更には政治,経済,文化的なまとまりとしての意味やそれについての国民の意識も変化してきているのであって,そのことも当然考慮されるべきことである。
もちろん,そのことの持つ意味も小さいわけではないし,参議院議員の選挙方法も衆議院のそれとは異なる独自のものを残していることは否定できない。しかしながら,問題は,そのことが選挙権の価値の平等という憲法上の要請を犠牲にする正当性を持ち得るかである。前記のように,参議院比例代表選出議員が,当初全国選出議員として期待された独自性を薄め,かつ衆議院におけるブロック比例代表制の導入によりその独自性の希薄化が進み,他方都道府県という区域の持つ今日的意味が変容しつつある中で,昭和22年に制定した枠組みがなお合理性を維持しているといい得るのか,しかもその人口較差が5倍を超えるという異常な数値に達しているのに,なお合理的なものといい得るかである。私は,このような状況の下で現状が選挙価値の平等という憲法上の要請と調和すると考えることは国民の常識と合致するとは到底思えず,この較差は国民の平均的意識や法感情からみて既に許容限度を大きく超えているものといわざるを得ないものと考えるのである。
3 多数意見は,参議院の独自性を例示し,そのほかにも,国会が正当に考慮することのできる政策目的ないし理由があって,投票価値の平等は,それらとの調和の中で損なわれているかどうかを考えるべきだとの考えに立つものである。しかしながら,私は,代表民主制の下における投票価値の平等の重要性に照らせば,平等は形式的に理解されるべきであって,そこに政策目的ないし理由をその内実を明らかにしないまま国会が正当に考慮することができるものとすることは,その裁量の幅を際限なく広げることになりかねないと危惧するのである。
議員の選出方法の改正は,時には議員にとって死活にかかわる問題であり,その裁量権の適正な行使には期待し得ない側面があることは否定できないところであるから,投票価値の不平等の是正は,司法の適切な関与が求められるべき領域の問題であるといわなければならない。それにもかかわらず,このように広い裁量にゆだねるならば,司法は投票価値の平等を憲法上の権利と宣言しながら,立法機関がそれを逸脱したものと判断する際に,その基準となる指標とその明確な根拠を失ってしまい,結局本来の使命を果たし得ないということになりかねないのである。むしろ,私は,公正かつ効果的な国民意思を反映させるための代表選出の方法を選択する上で,国会に裁量権はあるにしろ,投票価値の平等が憲法上の要請である以上,平等という言葉の通常持っている意味に照らし参議院においても2倍を超える較差が生じるような方法を選ぶことは本来的に正当性を持ち得ないと考えるのである。そして,もし,それを正当化する理由があるとすれば国会においてそれを国民に理解し得るように提示し,その司法審査が可能なようにすべきものであると考える。
このような考えに立って,私は,平成16年大法廷判決において,投票が国民が主権者として民主主義社会において最も重要な意思の表明であり,その価値の平等を憲法の要求するものであることを承認する以上,人口比例の原則を柔軟に解し得る参議院の独自性を考慮に入れても,どこに居住するかによって2倍を超える較差の生ずることが許されるような大きな価値はなく,国会がもしそれを許容する価値があるというのであれば,そのことを信託者である国民が理解し得る形で提示するべきであるとの意見を明らかにした。
4 参議院は,平成16年大法廷判決を受けて,参議院議長が主宰する各会派代表者懇談会の下に協議会を設け,本件選挙前に5回にわたって協議し,本件選挙後更に検討を重ね,選挙区選出議員のいわゆる4増4減に基づく公職選挙法の一部を改正する法律案を国会に提出した。
これによれば,改正前に比べ,選挙区間における議員1人当たりの人口較差は若干の減少をみるものの,それは微減にとどまっている。何よりも,そこでは参議院議員選挙法制定時に衆議院議員の選出方法と異なる独自のものにするために構想された仕組みがなお現時点で合理性を持っているのかについて議論された形跡はない。ただ,その後の前記のような状況の変化にもかかわらず,現在の枠組みを基本的に維持したまま選挙区間における議員1人当たりの人口較差を減少させるため最小限の作業が行われたというにとどまるのである。そこでは,国会がどのような政策的目的ないし理由があって,その検討の結果として今日の異常ともいうべき投票価値の較差を正当化し得ると考えたのかについての議論の跡が,国民の前に提示されたとはいえないのである。
5 もっとも,本件選挙は平成16年大法廷判決の言渡しから約6か月後に行われたものであり,その期間は選挙区間に存在する選挙人の投票価値の不平等を是正する期間としては十分なものではないという指摘がある。しかしながら,ある法規が合憲であるかどうかは,本来その内容によって決まるものであって,是正のために許される合理的期間の存否によって変わるものではないのである。のみならず,当法廷は昭和51年4月1日大法廷判決以来,選挙人の投票価値の平等が憲法上の要求する原則であることを繰り返し強調してきたところであって,立法機関としては,選挙権を平等に行使し得る選挙制度が民主主義の根幹を成すものであることに思いを致せば,現行制度の下の選挙区間の議員1人当たりの人口較差が5倍にも及ぶという投票価値の異常ともいうべき較差を生じている状況が長期にわたって継続し,それが解消される可能性が全くうかがわれないのであるから,これを是認するだけの目的ないし理由があるかについて常に検討すべきであり,その機会は十分にあったはずである。しかしながら,それがなされたという形跡はなく,今回の改正論議でもこの点についての検討がなされないまま,いわゆる較差の減少という弥縫策を講じたにとどまり,制度の枠組みの見直しを含めた選挙価値の平等を図るための検討が継続されるという状況もうかがえないのである。
投票価値の平等に向けての国会自身の自覚的政策が十分とはいえない状況の下で,非人口的要素の考慮に加えて是正のための期間の合理性をも判断の基準にすることは,立法府の裁量を一層大きくし,基準を益々曖昧なものとするものといわねばならず,この点は考慮の対象とはならないものといわねばならない。
6 以上のとおり,公職選挙法が定めた参議院議員選挙の仕組みに,選挙制度において国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることについての国会の裁量を是認しても,現在の制度の下での前記較差をもって,その正当な行使の結果とは到底いうことができず,本件定数配分規定は投票価値の平等という憲法上の価値を損なうものであって違憲といわなければならない。
したがって,原判決を変更し,事情判決の法理によって上告人らの請求を棄却するとともに,主文において本件選挙が違憲である旨の宣言をするのが相当である。
裁判官泉徳治の反対意見は,次のとおりである。
1 本件選挙当時における選挙区間の議員1人当たりの人口の較差は,最大1対4.92にまで達していたから,本件定数配分規定は,憲法上の選挙権平等の原則に大きく違背し,憲法に違反することが明らかである。したがって,本件選挙は違法であり,これと異なる原審の判断は是認することができない。原判決を変更し,事情判決の法理により請求を棄却するとともに,主文において本件選挙が違法である旨の宣言をするのが相当である。
2 1人1票の平等選挙の原則は,我が国憲法が採用する国民主権・議会制民主主義の根幹をなすものである。議員1人当たりの人口の選挙区間における較差が1対2以上になると,投票価値の較差が2倍以上となり,一部の選挙区の住民に対し実質的に1人当たり2票以上の複数投票を認めることになって,民主主義体制の根幹を揺るがすことになるから,憲法に違反することが明らかというべきである(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁における私の反対意見参照)。
本件選挙当時,東京都選挙区を基準にすると,投票価値が東京都選挙区の2倍以上の選挙区が31も存在し,その合計人口は約4714万人で総人口の約37%に当たり,議員1人当たりの人口の最大較差は1対4.92に及んでいる。神奈川県選挙区を基準にすると,投票価値が神奈川県選挙区の2倍以上の選挙区が25も存在し,その合計人口は約3545万人で総人口の約28%に当たり,議員1人当たりの人口の最大較差は1対4.61に及んでいる。千葉県選挙区を基準にすると,投票価値が千葉県選挙区の2倍以上の選挙区が29も存在し,その合計人口は約4267万人で総人口の約34%に当たり,議員1人当たりの人口の最大較差は1対4.83に及んでいる。これだけの住民が,東京都選挙区,神奈川県選挙区又は千葉県選挙区との比較でいえば,実質的に1人で2票以上を与えられていることになるのである。したがって,本件定数配分規定は,憲法の要求する平等選挙の原則に大きく違背し,憲法に違反するものといわざるを得ない。
3 平等な選挙権は,表現の自由等と並んで民主主義体制を支える基本的権利であるから,投票価値に較差を設けることが憲法に適合するか否かを審査する場合には,較差を設けた目的が国民の意見を公正かつ効果的に国会に反映させるため真にやむを得ない合理的なものであるかどうか,較差の態様が上記目的と実質的な関連性を有するものであるかどうかを厳格に問う必要がある。投票価値に較差を設けたことに一応の合理性が認められれば足りるとして,国会に広範な裁量を認めるべきではない。
4 ところが,国会議員の定数配分規定に関する累次の最高裁判所判決は,「国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が損なわれることになっても,やむを得ないものと解すべきである。」と判示してきた。仮に,このような判例の見解に立つにしても,本件定数配分規定のうち,選挙すべき議員数が4人以上の選挙区間において,選挙すべき議員数が人口に比例しておらず,議員1人当たりの人口に最大1対3.01の較差(東京都選挙区と栃木県選挙区との間におけるもの)が存することについての合理性を是認することはできない。
参議院議員選挙法は,地方選出議員の選挙区を各都道府県とした上,各選挙区に対する定数配分について,憲法46条が参議院議員は3年ごとにその半数を改選すべきものとしていることに応じ,各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることになるように配慮し,各選挙区において選挙すべき議員数を偶数としてその最小限を2人とする方針の下に,昭和21年当時の人口に基づき,各選挙区の人口に比例する形で,2人ないし8人の偶数の議員数を配分した。公職選挙法は,参議院議員選挙法の上記定数配分基準を引き継いだが,その後に各選挙区の人口が変動したにもかかわらず,各選挙区の人口に比例して定数配分を行うという当初の定数配分基準に従った改正を怠り,平成6年と平成12年に,選挙区の一部についてのみ議員数の部分的修正を行うにとどまった。当初の定数配分基準に従う限り,各都道府県を選挙区として,各選挙区に最小2人の偶数の議員数を配分することはやむを得ないが,その制約の下でも,定数配分は人口に比例して行う必要がある。しかし,定数配分を完全に人口に比例させるための改正を怠ってきたため,本件選挙当時,選挙すべき議員数が4人以上の選挙区間においても,選挙すべき議員数が人口に比例しておらず,議員1人当たりの人口に最大1対3.01の較差が存することになったのである。すなわち,特段の立法目的があって,上記のような較差を設けたというのではなく,各選挙区の人口の変動に応じて定数配分を適正に是正することを怠ってきたため,上記のような較差が残ることになったというにすぎないのであって,この較差の放置をもって裁量権の合理的な行使という余地はない。
ちなみに,各選挙区の議員1人当たりの人口が,総人口を定数146人で除した人口の3分の4未満で3分の2を超える範囲内に収まれば,較差が1対2未満となる。本件定数配分規定の下では,上記の範囲内に収まる選挙区の合計人口が総人口の約39%にとどまるのに対し,当初の立法趣旨に従い,各選挙区において選挙すべき議員数を偶数としてその最小限を2人とし,人口に比例して定数146人を各選挙区に配分すれば,上記の範囲内に収まる選挙区の合計人口が総人口の約79%に拡大し,総体的には各選挙区間の較差がかなり縮小されるのである。また,選挙区選出議員の過半数74人を選出することが可能な人口も,本件定数配分規定の下では,総人口の約32%にとどまるのに対し,当初の立法趣旨に従った定数配分を行えば,総人口の約40%に拡大する。このように,日本全体としてみれば,当初の立法趣旨に従った定数配分を行うことにより,較差の程度が相当に改善されるのである。
当初の立法趣旨に従った定数配分を行っても,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.87という,依然として高い数値を示すにとどまる。しかし,最大較差というのは,47の選挙区の中から2つの選挙区を取り出して比較した数値であって,言わば点と点との比較の数値である。47の選挙区の全体,すなわち日本全体を視野に入れれば,当初の立法趣旨に従った定数配分を行うだけでも,上記に指摘したように,較差の程度が相当に改善されるのであるから,せめて,当初の立法趣旨に従った定数配分に改正すべきであり,この改正を怠っていることをもって合理的な裁量権の行使と評することはできない。
裁判官才口千晴の反対意見は,次のとおりである。
本件選挙における本件定数配分規定は,憲法14条1項等に違反して違憲であるから,原判決を変更し,上告人らの請求を棄却するとともに,主文において本件選挙が違法である旨の宣言をするのが相当である。
その理由は,次のとおりである。
1 憲法は,すべての国民は法の下において平等であることを宣明し(14条1項),公務員を選定し及びこれを罷免することは国民の固有の権利であるとして成年者による普通選挙を保障し(15条1項,3項),両議院は全国民を代表する選挙された議員で組織するとし(43条1項),選挙人の資格は人種,信条,性別,社会的身分等によって差別してはならない(44条)としている。この憲法が保障した普通選挙における選挙権の平等は,名実共に平等に1人1票であることを要求するものであり,公職選挙法36条が「投票は,各選挙につき,1人1票に限る。」と規定するのもその趣旨と解すべきである。
2 1人1票の平等原則は,具体的な選挙制度においても議員1人当たりの選挙人の数の較差が各選挙区間で限りなく1対1となるように構築されなければならないが,憲法は二院制と参議院議員の3年ごとの半数改選制度等を採用している(42条,46条)ので,選挙人の1票の価値に多少の較差が生ずることはやむを得ない。
3 しかし,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差が2倍を超えることになると,実質的に選挙人1人に2票以上の複数投票を認める結果となり,これは憲法により保障された基本的人権の一つである投票価値の平等の原則に反することになるから憲法違反となる。
これを本件選挙についてみると,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.13となっていた。これは議員1人当たりの選挙人が最少の選挙区の1票が選挙人が最多の選挙区の1票の5倍強の投票価値を有することを意味し,最少の選挙区の選挙人は,1人で実質5票を与えられたことになる。しかも,このような2倍を超える不平等が,程度の差はあれ,半数以上の選挙区に生じている実態をみれば,本件定数配分規定は,憲法が保障する投票価値の平等の原則に大きく違背し,憲法に違反することは明白である。
4 参議院議員の選挙制度の仕組みと投票価値の平等との関係については,参議院の特殊性を強調し,選挙の議員定数配分について人口比例の原則を相当程度緩和することができるとする見解,あるいは,住所地を異にすることによる投票価値の較差については国会の裁量権が広く認められるので,当該立法が合理性を欠く恣意的な差別をする場合に初めて違憲となるとの見解がある。
しかし,選挙における平等の原則は,国民の基本的人権の問題であって,二院制等の制度の問題としてとらえるべきではなく,国民は,参議院議員の選出についても,衆議院議員の選挙と同様に基本的に平等な選挙権を与えられなければならない。また憲法47条は,「選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める。」とするが,これは選挙事項法律主義の原則を確認したものにすぎず,これを論拠に議員定数の配分を含む選挙に関する事項につき,国会の広範な裁量権を導くことはできない。
したがって,司法は,議員定数配分問題につき憲法の理念に照らして厳格な審査をする必要がある。
5 ところで,平成16年大法廷判決は,その結論において,前回選挙当時,本件定数配分規定は憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示したが,多数意見を構成する裁判官の中には,補足意見において,従前とは異なり定数配分規定の改正に向けての厳しい示唆をしたものがあった。
私は,前述のとおり,本件定数配分規定は憲法に反すると判断するものであるが,これに加えて,国会は,参議院選挙区選出議員の選挙における定数配分の在り方に関して根本的解決を目指した真摯な努力を重ねる必要があったものと考える。すなわち,平成16年大法廷判決の言渡しから本件選挙までの期間は6か月であったとはいえ,国会は,同大法廷判決の実質を注視し,憲法により保障された基本的人権の一つである投票価値の平等の重要性にかんがみ,本件選挙までの間に,より具体的な改革案を示す必要があったのではないかと考えるのである。
前回選挙後も人口の変動が投票価値の著しい不平等状態を生じさせ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じていないことは,国会の裁量的権限の許される限界を超えるものと判断される。
6 よって,私は,本件においては,原判決を変更し,公益上の見地から無効判決ではなく請求棄却の事情判決にとどめ,主文において本件選挙が違法である旨の宣言をするのが相当であると思料する。
裁判官中川了滋の反対意見は,次のとおりである。
私は,本件定数配分規定は憲法に違反するものであり,本件選挙は違法であると考える。その理由は次のとおりである。
1 多数意見は,次のとおり述べる。(1)憲法は,国会の両議院の議員を選挙する国民固有の権利につき,選挙人の資格における人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入による差別を禁止するにとどまらず,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等をも要求していると解するのが相当である。(2)しかしながら,憲法は,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとしていること,国会を衆議院と参議院の両議院で構成するものとし,各議院の権限及び議員の任期等に差異を設けているところ,その趣旨は,衆議院と参議院とがそれぞれ特色のある機能を発揮することによって,国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあることから,憲法は,投票価値の平等を選挙制度の仕組みの決定における唯一,絶対の基準としているものではなく,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかの決定を国会の裁量にゆだねており,投票価値の平等は,参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものとしていると解さなければならないのであり,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が損なわれることになっても,憲法に違反するとはいえない。
私は,以上の点については賛成するものである。したがって,国会の定めた本件定数配分規定が国会の裁量権の行使として合理性を是認し得るものかどうかが問われなければならない。
2 多数意見は,参議院議員の選挙制度の仕組みについて,憲法が二院制を採用したことから,参議院議員の選出方法を衆議院議員のそれとは異ならせることによって参議院の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとする意図の下に,参議院議員を全国選出議員ないし比例代表選出議員と地方選出議員ないし選挙区選出議員とに分け,後者については,都道府県が歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有し,政治的に一つのまとまりを有する単位としてとらえ得ることに照らし,都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味しようとしたものであると解することができること,また,憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていることに応じて,各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることになるように配慮し,各選挙区に偶数により定数配分を行うこととしたものと解することができるとし,このような憲法の趣旨等に照らすと,公職選挙法が定めた参議院議員の選挙制度の仕組みは,国民各自,各層の利害や意見を公正かつ効果的に国会に代表させるための方法として合理性を欠くものとはいえず,国会の有する立法裁量権の合理的な行使の範囲を逸脱するものであるということはできないとして,本件選挙当時において選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が1対5.13であったとしても本件定数配分規定が憲法に違反しないとする。
確かに,現行法制下での参議院議員の選挙制度は,創設された当初から,都道府県ごとの選挙区と半数改選制への配慮から定数を偶数としてその最小限を2人とし,各選挙区の人口に比例する形で2人ないし8人の偶数の議員数を配分する制度を採用してきており,都道府県単位の選挙区設置及び定数偶数配分制に上記のような一定の合理性は認めることができる。しかし,憲法は二院制と3年ごとの半数改選を定めているにすぎず,都道府県単位の選挙区設置及び定数偶数配分制は憲法上に直接の根拠を有するものではない。そして,参議院議員の定数配分については,その後当初の人口分布が大きく変わり,それに伴う人口比例による配分の改定が適宜行われなかったこともあって,上記のとおり5倍以上の較差が生ずるに至ったものである。上記のとおり,投票価値の平等を憲法の要求であるとする以上,5倍以上の較差が生ずるような選挙区設定や定数配分は,投票価値の平等の重要性に照らして許されず,これを国会の裁量権の行使として合理性を有するものということはできないと解すべきであり,このような較差が生じている不平等状態は違憲とされるべきものと考える。
3 ところで,現行の都道府県単位の選挙区設定と定数偶数配分制を維持したままで不平等状態を改善しようとすれば,例えば上告人ら自身の試案によっても,参議院(選挙区選出)議員の選挙について,平成12年10月実施の国勢調査結果による人口に基づいていわゆる最大剰余方式により各選挙区の人口に比例した議員定数の再配分を試みた場合には,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は1対4.87となるというのであり,「参議院改革協議会専門委員会(選挙制度)報告書」によれば,14増14減案によっても最大較差は4.13倍となるにとどまるのであって,なお4倍以上の較差が存在することが明らかである。
したがって,不平等状態の大幅な改善には今や従来の選挙制度の在り方自体の変更が必要とされるものと思われる。
4 以上によれば,本件定数配分規定は違憲であるが,国会による真摯かつ速やかな是正を期待し,今回は事情判決の法理に従い本件選挙を違法と宣言するにとどめ,無効とはしないものとするのが相当である。
(裁判長裁判官 町田 顯 裁判官 横尾和子 裁判官 上田豊三 裁判官 滝井繁男 裁判官 藤田宙靖 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 徳治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 中川了滋 裁判官 堀籠幸男 裁判官 古田佑紀 裁判官 那須弘平)