David T. Courtwright, No Right Turn: Conservative Politics in a Liberal America



No Right Turn: Conservative Politics in a Liberal America

  • David T. Courtwright, No Right Turn: Conservative Politics in a Liberal America
    • 『右折禁止: リベラルアメリカの保守政治』
       1966年以降、米国は「右折」し、リベラル派の政治権力は弱体化を始めた。この点について疑念をもつ人はほとんどいない。しかし、本書によると、米国の「右折」ということに少しでも疑念を向けてみるならば、保守派の黄金時代においてすら、必ずしもすべてが実際に「右」だったわけではないことがわかるはずだという。本書は半世紀にわたる米国政治の刺激的な概説であり、その焦点は、リベラリズムに敵対する陣営が抱いていた反革命の夢に当てられる。大きな政府に国民が依存する現状を覆す、道徳革命や性革命を否定する、文化戦争に勝利する、これらの夢を逐一検討していった結果、本書が示すのは、これらがどれも実現していないという事実なのだ。
       クレア・ブース・ルース、バリー・ゴールドウォーター、ケネディ兄弟から、ジェリー・ファルウェル、デイヴィッド・ストックマン、リー・アトウォーターまで、論争の中心となった有名人たちを巧みに紹介していく。リチャード・ニクソンについていえば、道徳や政府の干渉に対する人々の不安を共和党の優位に変換する才能に秀でていた一方、共和党の優位を反動的政策に変換する能力は持っていなかったことがわかる。企業の利害関心、ベビーブーマーのライフスタイル、そしてメディアは、ニクソンやその後継者たちと対立する立場にあったが、それに対しては、犯罪、ドラッグ、福祉依存への批判的態度を明確にすることで、うまく懐柔することに成功した。他方、宗教的保守派は、堕胎、学校での祈り、猥褻、ゲイの権利、賭博のような悪徳の合法化などの論点において敗退し、財政的保守派は予算の上昇を指をくわえて見ているしかなかったのだ。
       レーガン大統領についていえば、その政策は大きな政府、強大な防衛力、低い税率、高い赤字、溢れ返る刑務所、愛国的な符牒の混合体であり、見かけ上の保守主義にすぎないことがわかる。最終的には、ジョージ・W・ブッシュによるレーガニズムの濫用に対して反旗を翻したのは保守派だったのだ。著者の文章は、驚きと説得力に満ちており、近年の米国史についての最もクリシェ化した見方に対して、刺激的な反論を提供してくれる。