Robert J. Sternberg, College Admissions for the 21st Century
- Robert J. Sternberg, College Admissions for the 21st Century
- 『21世紀の大学入試』
SAT、ACT、GPA。誰でも知っているように、これらの点数は、大学が受験生について知りたいことをすべて示してくれるわけではない。しかし他にどんな選抜方法があるだろうか。もしあったとして、それが既存の選抜方法よりもすぐれているといえるための条件は何だろう。著者は、知能と創造力の研究において第一線で活躍する学者であり、本書はその知見に基づいて、大学入試についての大胆かつ実践的なアプローチを提案するものだ。
既存の入試は、記憶力と分析力を測る仕様になっている。しかし、大学のキャンパスに閉じこもるのではなく、変動し続けるグローバル社会に目を向けるなら、そこでは、記憶力や分析力だけでは不十分だということがわかるはずだ。今後の指導者、そして市民には、それらに加えて、創造力、実践力、知恵が必要なのだ。著者はそう主張する。
では、そうした複合的な性質に対する潜在能力を、きちんと測定するにはどうすればいいのか。この問いに対する一つの答えが、タフツ大学で最初に用いられた新しい大学入試法「カレイドスコープ」だ。これは、受験生に対していくつかの質問を行い、自由回答をさせ、一定の方法にしたがって回答を採点するという方法であるが、これを用いることで、受験生の側でも試験官の側でも、従来の入試の枠にとらわれない入試を体験することができる。
では、はたしてその効果やいかに。著者の詳細な論述によると、カレイドスコープで高得点をあげた受験生は、初年度の成績もまた高く、その対応の度合いは、SATや高校のGPAをはるかに上回るという。加えて、初年度の課外活動、リーダーシップ、市民活動についても、同様の対応がみられたそうだ。さらに、カレイドスコープが実施された年の入学生は、SATと高校のGPAの平均点が必ず高くなっている。
タフツ大学で成功したということは、他の大学でも成功しうるということだ。カレイドスコープのような新しい選抜方法を採用することで、多くの大学、そして多くの学生が、従来の入試の狭い枠組みから解き放たれることになるだろう。そしてそれは、世界中の、高い能力と動機をもった新しい種類の市民に対して、新しい教育法を行うためのきっかけとなるはずだ。
- 『21世紀の大学入試』