「岩波現代文庫 学術」目録リスト一覧 201-250 (2008年-)



王羲之――六朝貴族の世界 (岩波現代文庫)

  • 243. 吉川忠夫,『王羲之: 六朝貴族の世界』,2010年 NEW!!
    • 偉大な書家である王羲之(おうぎし)は、時代を超えて尊敬されている。しかし書聖という側面は、彼の全体像の一部にすぎない。四世紀、六朝時代の貴族として、傑出した知識人として、王羲之は時代にいかに向き合っていたのか。本書はその生涯と生活、思想と信仰の全体像を時代の中で描き、その書の背後に存在したものを深く解明する。論考数編を新たに収録。



偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)

  • 242. A. R. ルリヤ,天野清(訳),『偉大な記憶力の物語: ある記憶術者の精神生活』,2010年 NEW!!
    • 直観像と共感覚をもつその男は、忘却を知らなかった。電話番号を舌で感じ、コトバの音から対象の意味を理解する。想像によって手の体温を変える。直観像を利用して課題を鮮やかに解決する一方で、抽象的な文や詩の理解はひどく困難。特異に発達した記憶力は、男の内面世界や他者との関わりに何をもたらしたのか。(解説=鹿島晴雄)



竹内好――ある方法の伝記 (岩波現代文庫)

  • 241. 鶴見俊輔,『竹内好: ある方法の伝記』,2010年 NEW!!
    • 竹内好(1910-77)の著作はなぜ今なお新鮮で、読む者を魅了するのか。自分のくらしの中で魯迅を読むことをとおして自分の問題をみつけ、自分で解こうと努力することを生涯にわたってつづけた竹内に対し、深い尊敬と共感をもって書きあげた渾身の知的評伝。補論として「戦中思想再考: 竹内好を手がかりとして」を併録。(解説=孫歌)



ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)

  • 240. C. リード,彌永健一(訳),『ヒルベルト: 現代数学の巨峰』,2010年
    • 広い視野と独創性をもった「現代数学の父」はいかにして誕生したのか。本書はヒルベルトの青年期から晩年までを激動の時代とともに描きだす評伝。この巨人がなしとげた数多の学問的業績の意義と、同時代の数学者たちの挑戦についても言及した力作である。ヘルマン・ワイルの長大な解説も全文収録した待望の文庫版。



久野収セレクション (岩波現代文庫)

  • 239. 久野収佐高信(編),『久野収セレクション』,2010年
    • 久野収はアカデミズムにこもる哲学者ではなく、平和問題談話会、ベ平連、『週刊金曜日』などを通じて、市民の先頭に立って活動を続けてきた。混迷する現代、その思想にわれわれは何を学ぶべきか。久野に私淑した佐高が、長く読み継がれるべき珠玉の論考十六篇を厳選した文庫オリジナル編集版。



転校生とブラックジャック――独在性をめぐるセミナー (岩波現代文庫)

  • 238. 永井均,『転校生とブラック・ジャック』,2010年
    • 脳と身体が入れ替わってしまった「転校生」の一人である“私”は、ブラック・ジャックのような天才的な外科医の手術によって、もとの“私”に戻ることができるのか?もし火星に“私”と全く同じ身体と記憶を持つ人間が作られたら、それは“私”であると言えるのか?SF的思考実験をもとに、先生と十二人の学生のセミナー形式で綴られる、独在論をめぐる第一級の哲学的議論。



脳の可塑性と記憶 (岩波現代文庫)

  • 237. 塚原仲晃,『脳の可塑性と記憶』,2010年
    • ほとんど無限の容量を持つ人間の記憶は脳のどこにどのように蓄えられ、長期にわたって保たれるのか。なぜそれを瞬時にして思い出すことができるのか。本書は記憶を蓄える場としてのシナプスの柔軟性に注目し、いまだ神秘に満ちている脳の記憶と学習のメカニズムを生涯探究し続けて、脳研究の歴史に輝かしい足跡を残した著者による先駆的な意義を持つ遺著である。



新編 平和のリアリズム (岩波現代文庫)

  • 236. 藤原帰一,『新編 平和のリアリズム』,2010年
    • 権力闘争としての国際政治の現実を受けいれたうえで、平和の条件を粘り強く探ってゆくこと。そうした著者の知的挑戦は、現代世界に生起する諸問題を前に、時論という形で展開されてきた。冷戦終焉から9・11事件、イラク戦争を経て、日米の民主党政権誕生までの二〇年にわたる論考を収載する。石橋湛山賞を受賞した二〇〇四年の旧版に多数の新論考を加え、全国的に再編集。



江戸思想史講義 (岩波現代文庫)

  • 235. 子安宣邦,『江戸思想史講義』,2010年
    • 江戸思想は、あまりにも無自覚に近代の眼差しのもとで再構成されてきたのではないか。中江藤樹から本居宣長まで、江戸の思想家を当時の言説空間に投げ返すことによって江戸を読み直し、新たな江戸の姿によって今度は近代を反照する。本書の構造は「歴史への批判的な視座」として江戸を構成する新たな戦略である。



心を生みだす遺伝子 (岩波現代文庫)

  • 234. ゲアリー・マーカス,大隈典子(訳),『心を生み出す遺伝子』,2010年
    • 「ゲノム=青写真」という比喩は誤解を招く。遺伝子はむしろレシピのようなもの。コンピュータプログラムでいうIFとTHENの両方がある。それが環境と手を取り合って働くから、人は生涯にわたって経験から学ぶことができるのだ。遺伝子が実際に何をしているかを見ることで、「生まれと育ち」の真の関係が明らかになる。



トランスクリティーク――カントとマルクス (岩波現代文庫)



戦後日本の思想 (岩波現代文庫)

  • 232. 久野収鶴見俊輔藤田省三,『戦後日本の思想』,2010年
    • “戦後”がまだ戦後であった1950年代末、戦争によって混迷に陥った日本人の思想の建直しをめざして行われた白熱の討論。「近代文学」「民主主義科学者協会」「心」それぞれのグループの思想、生活綴り方・サークル運動、社会科学者の思想、戦争体験の意味、の六つのテーマに即して同時代の思想を縦横に論じ、その可能性を模索した。



日本型「教養」の運命 歴史社会学的考察 (岩波現代文庫)

  • 231. 筒井清忠,『日本型「教養」の運命: 歴史社会学的考察』,2009年
    • かつて教養主義は人々をとらえたにもかかわらず、歴史的に衰退したのはなぜだろうか。本書は近代日本知識社会のインフラであった「教養」の動態を歴史社会学的アプローチで究明し、「教養」が輝いていた時代の意味を問う。知と文化の未来を考察するためにいま何が求められているか。現代文庫化に際して、現代日本の教養を考察する書き下ろし原稿を付す。



宇宙誌 (岩波現代文庫)

  • 230. 松井孝典,『宇宙誌』,2009年
    • 古代ギリシャから現代のホーキングまで、二百億光年の時空を天才たちと共にたどる魅惑の知的大紀行。私たちはどこから来たのか。私たちとは何か。そしてどこへ行くのか。永遠と一瞬が交差する人間の一生を地球史の中で平明に描き出す。



国際政治史 (岩波現代文庫)

  • 229. 岡義武,『国際政治史』,2009年
    • 東京大学法学部で政治史・外交史を講じた岡義武が一九五五年に岩波全書の一冊として著した名著。長く絶版となっていたものを、読みやすい表記に変えて復刊する。国際政治の推移を現象的に記述するのではなく、その構造の歴史的変化を描き出した画期的な内容は、今も必読の古典として生きている。



近代日本の国家構想―1871‐1936 (岩波現代文庫)

  • 228. 坂野潤治,『近代日本の国家構想 1871-1936』,2009年
    • 近代日本の政治家や思想家は、どんな国家像を描き、それをいかに実現しようとしたのか。現代の政治状況を見据えつつ、廃藩置県から戦時体制成立までの約六五年間の政治史を、政策対立や運動史ではなく多様な政治体制構想の相剋の過程として描き出す。戦前期日本の政治を俯瞰する出色の論考。



ヒロシマを生き抜く〈下〉―精神史的考察 (岩波現代文庫)

  • 227. ロバート・J. リフトン, 桝井迪夫/湯浅信之越智道雄/松田誠思(訳),『ヒロシマを生き抜く: 精神史的考察 下』,2009年
    • 被爆者の心に癒えぬ傷を残した原爆体験。インタビューが行われた一九六二年当時、街は復興への道を歩む一方、冷戦下で核実験が繰り返された。被爆者はこの時代にどのような葛藤を抱え、生への道を歩もうとしていたのか。また、原爆投下者・占領統治者としてのアメリカに抱く思いはどうか。ナチ強制収容所の生存者のケースにも触れながら、被爆者の深刻な葛藤と体験克服に至る過程を、「被爆者の英知」として導き出す。



ヒロシマを生き抜く〈上〉―精神史的考察 (岩波現代文庫)

  • 226. ロバート・J. リフトン, 桝井迪夫/湯浅信之越智道雄/松田誠思(訳),『ヒロシマを生き抜く: 精神史的考察 上』,2009年
    • 精神科医であり研究者として来日していた著者は、被爆後十七年の広島で、広範にわたる被爆者へのインタビュー調査を行なった。対象は、無差別に抽出した市民に加え、学者・医者・運動家など七十余名。被爆時の体験、原爆で負った障害、見えざる放射能の恐怖、生き残ったことの罪意識…。人類への最大の破壊行為の影響を、被爆者の言葉から丹念に分析し、その精神的側面に初めて光をあてた記念碑的著作。



心理療法入門 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション VI)

  • 225. 河合隼雄,河合俊雄(編),『〈心理療法〉コレクションVI 心理療法入門』,2010年
    • 心理療法の本質とは何か。第一人者である著者が、イメージ、身体性、イニシエーション、物語、因果律、人間関係、個性との関わりなど、心理療法において必要と思われる様々な事柄のエッセンスを、豊富な事例を用いてわかりやすく解説する。心理療法家をこころざす学生にはもちろん、教育、介護など心の問題にたずさわるすべての人に役立つ入門書。最晩年の講演「こもりと夢」を併録。



ユング心理学と仏教 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション V)

  • 224. 河合隼雄,河合俊雄(編),『〈心理療法〉コレクションV ユング心理学と仏教』,2010年
    • 世界トップクラスのユング心理学者を招いて行われるフェイ・レクチャーに日本人として初めて招聘された著者の、好評を博した講演。ユング派の分析を深めるにあたって、日本人である著者がいかに仏教の力を意識するようになったか、自らの個人的経験をまじえて語る。著者が心理療法と仏教との関わりについて初めて本格的に論じた書。「現代人と宗教―無宗教としての宗教」を併録。



心理療法序説 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション 4)



生と死の接点―“心理療法”コレクション〈3〉 (岩波現代文庫)

  • 222. 河合隼雄,河合俊雄(編),『〈心理療法〉コレクションIII 生と死の接点』,2009年
    • 思春期、老い、そして死など人生の転機における様々な危機を、どのようにとらえるべきか?通過儀礼のない現代、人生の各段階への移行はどのようになされればいいのか。老と若、男と女、生と死など人間存在の境界の問題に考察を加え、神話、昔話、児童文学に具体的な臨床例も織りまぜ、生きることの意味に深くせまる河合心理学の傑作。「序説 生きることと死ぬこと」「思春期のイニシエーション」を併録。



カウンセリングの実際―“心理療法”コレクション〈2〉 (岩波現代文庫)

  • 221. 河合隼雄,河合俊雄(編),『〈心理療法〉コレクションII カウンセリングの実際』,2009年
    • カウンセラーが、実際のカウンセリング場面で直面する問題とは何か?スイスのユング研究所で学び、日本にユング派の心理療法を初めて本格的に導入した著者自身が、体当たりで行なったカウンセリング体験の例などを紹介しながら、カウンセラーの心がまえとして何が必要かを語る。河合心理療法入門の実践編。カウンセラーを目指す人はもちろん、教育者などカウンセリングに関わるすべての人に役立つ本。



ユング心理学入門―“心理療法”コレクション〈1〉 (岩波現代文庫)



デモクラシーと国民国家 (岩波現代文庫)



近衛文麿―教養主義的ポピュリストの悲劇 (岩波現代文庫)



セクシィ・ギャルの大研究―女の読み方・読まれ方・読ませ方 (岩波現代文庫)

  • 217. 上野千鶴子,『セクシィ・ギャルの大研究: 女の読み方・読まれ方・読ませ方』,2009年
    • もの欲しげな目に半開きの唇、しなりくねらせた肢体。世に流布するお色気広告を、ズバリ分析。社会が演出し、女に演技を求めている「女らしさ」、男が演技したがっている「男らしさ」の実態を大胆に、そして軽妙な筆致であばき出す。男女共にまとう「社会的衣服」を身ぐるみはがされる、キケンで快感一杯の“処女喪失作”。



家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平 (岩波現代文庫)



日本国憲法の誕生 (岩波現代文庫)

  • 215. 古関彰一,『日本国憲法の誕生』,2009年
    • 憲法の制定過程で何が起きたか。第九条制定の背景にいかなる事情が存在していたか。本書はGHQ側、日本側の動向を徹底的に解明し、従来盲点だった論点を新たに分析した新稿を収録して、決定版として刊行される。現憲法に対する賛否の如何を問わず、知的誠実さをもって憲法に向き合おうという読者の必読書である。



国民の天皇―戦後日本の民主主義と天皇制 (岩波現代文庫)



イエス・キリストの言葉―福音書のメッセージを読み解く (岩波現代文庫)



江戸の食生活 (岩波現代文庫)

  • 212. 原田信男,『江戸の食生活』,2009年
    • 大都市江戸では食べ物商売が大繁盛。一大マーケットはどのように成り立っていたのだろう。また、武士の日記や将軍家の記録から日々の献立を検討。何が食卓にのぼり、タブーは何だったのか。医食同源思想、飢饉時の対応、アイヌ琉球の多様な食まで、江戸期の食文化を、列島の空間的広がりのなかで大きく捉えた好著。伊豆諸島を採り上げた「島の食生活」を増補。



新版 ディコンストラクション〈2〉 (岩波現代文庫)



新版 ディコンストラクション〈1〉 (岩波現代文庫)



マッド・マネー―カジノ資本主義の現段階 (岩波現代文庫)



私はどうして私なのか―分析哲学による自我論入門 (岩波現代文庫)

  • 208. 大庭健,『私はどうして私なのか: 分析哲学による自我論入門』,2009年
    • 自分がいる、というのはいったいどういうことなのか?気鋭の哲学者・倫理学者である著者は、自己意識の生まれる過程、「私」という言葉の使われ方などから、分析哲学の手法によって丁寧にこの問題を解いていく。「私」とは、他から独立したピュアな存在ではなく、他者の呼びかけに答えられる「呼応可能性(=責任)」の主体としての存在なのだ!「あなた」がいて「私」がいる意味を鮮やかに検証する。



広告の誕生―近代メディア文化の歴史社会学 (岩波現代文庫)

  • 207. 北田暁大,『広告の誕生: 近代メディア文化の歴史社会学』,2008年
    • 近代日本のメディア・消費文化にとって、広告が果たした役割とは何か。広告とは、いかに「意味の媒体」であり続けたのか。存在としての緩さ、過剰な言説との不均衡を解明しつつ、一九二〇年代から現代に至る時代空間の中で、広告の変容を考察する。俊英による刺激的な力作論考。



近代日中関係史断章 (岩波現代文庫)

  • 206. 小島晋治,『近代日中関係史断章』,2008年
    • 1972年の日中国交正常化以降両国間の交流は大きく進展したが、相互理解と友好的感情は深まっていない。本書は幕末から日中戦争までのいくつかのエピソードを取り上げ、日中両国がアヘン戦争の衝撃をどう受け止めたか、その後の日本と中国の歴史はどのようにからみあい、両国国民はお互いをどう認識したかをさぐる比較近代思想史の試みである。



自我の起原―愛とエゴイズムの動物社会学 (岩波現代文庫)

  • 205. 真木悠介,『自我の起原: 愛とエゴイズムの動物社会学』,2008年
    • 本書は、比較社会学の視座から現代社会を考察してきた著者が、生命史における「個体」発生とその主体化の画期的意義を明らかにする。遺伝子理論・動物行動学・動物社会学の成果に向き合いつつ、動物個体の行動の秘密を探り、「自我」成立の前提を鮮やかに解明する。「人間的自我」を究明する著者ならではの野心作。



民衆の大英帝国―近世イギリス社会とアメリカ移民 (岩波現代文庫)

  • 204. 川北稔,『民衆の大英帝国: 近世イギリス社会とアメリカ移民』,2008年
    • 一七・一八世紀イギリス社会の貧民層にとって、帝国の形成は何を意味したか。落魄し年季奉公の契約をして海を渡った者、兵士、流刑者、農民。植民地アメリカの基盤を造った彼らの出自と体験から、大西洋へと送り出した社会の実像が浮かび上がる。史料を駆使し、人の行き来の側面から大英帝国の姿をヴィヴィッドに描く「帝国」の社会史。



新版 地球進化論 (岩波現代文庫)

  • 203. 松井孝典,『新版 地球進化論』,2008年
    • 地球は奇跡の星だろうか。いかなる偶然によって、生命を育む「青い地球」となりえたのだろうか。微惑星の集積過程の理論的・実験的研究など太陽系形成史の研究を長く続け、地球の進化を理論的に追究してきた著者が、この二〇年の研究の進展を踏まえて新たに大幅加筆した。太陽系の歴史、地球の起源、海の誕生、大気の進化等を踏まえて、地球の未来像を考察する上での豊かな視座を提供する。



定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫)

  • 202. 柄谷行人,『定本 日本近代文学の起源』,2008年
    • 明治二十年代文学における「近代」「文学」「作家」「自己」「表現」という近代文学の装置それ自体を再吟味した論考を全面改稿した決定版。文学が成立して思考の枠組みになる過程を精神史として描き、「起源」を考察しつつ「終焉」の地平までを視野に収めた古典的名著。



スルタンガリエフの夢―イスラム世界とロシア革命 (岩波現代文庫)