性別による賃金格差はまだ大きい




manchester.ac.ukより。
就職して最初の数年は男女間で賃金に差はあまりないが、8年目くらいになるとかなり大きくなる。女性の教育水準の上昇と晩婚化が初期における賃金の平等化を説明し、出産育児による労働市場からの一時撤退と「女性職」への囲い込みがその後の格差拡大を説明する、という話。

性別による賃金格差はまだ大きい

性別による賃金格差は女性のキャリアの最初の10年を通じて顕著に拡大する。これが最新の研究の結果だ。
マンチェスター大学の Leen Vandecasteele 博士の研究によると、今日、教育機会の男女平等は実現され、スタートは平等に切れるようになったが、その効果は往々にして、女性の子育て責任が開始される頃には失われてしまうのだという。
社会学者のVandecasteele博士は、何年ものあいだ労働市場から離脱して過ごさなければならず、掃除や保育のような、主に女性しか雇わないような職業で働くことの不公平について非難する。
Vandecasteele博士は昨日、ブライトンで開かれた英国社会学会の会議「仕事、雇用、社会」で、研究成果を発表した。
用いたのは5000戸以上の家計の調査データで、そこからグラフを作成し、1991年と2000年に就職した2つのコーホートの初期キャリアを比較した。
その結果、女性はその初期キャリアにおいて、1991年コーホートでは男性より18%収入が少なかった。ただこの格差は、2000年コーホートだと5%にまで下がる。
このデータ分析から、女性のキャリアのスタート時点におけるジェンダー間の賃金格差は大幅に縮小したことがわかる、と博士は言う。
ところが、各コーホートのその後のキャリアを追っていくと、8年目までに、2000年コーホートの性別による賃金格差は24%に達する。これは、1991年コーホートの27%に届きそうな勢いだ。
コーホート同士を較べてみると、2000年の方が教育水準が高く、他方で出産がかなり遅い。キャリアのスタート時における賃金の平等は、この事情によるものだ、と博士は説明する。
研究の拠点は、マンチェスター大学のCathie Marsh Centre for Census and Survey Researchだ。
博士は言う。「研究の結果、男女間の賃金平等化はほぼ達成されたと言ってよいでしょう。ただし、それはキャリアのごく初期だけの話です。英国の労働市場に参入してくる若い世代にとって、教育機会と初期賃金の男女平等はかなり達成されましたが、この平等はキャリアが進むにしたがって消え失せてしまうのです。」
博士はこう付け加える。「政策立案者は、教育だけ見ていても性別による賃金格差はなくならないという現実を見据えなくてはなりません。労働市場から離脱することが賃金に与える負の効果、それからジェンダーによる職業隔離、これらに注意することは、教育よりも重要なのです。」