押井守監督『スカイ・クロラ』

スカイ・クロラ (通常版) [Blu-ray]

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唯一期待していた空戦のシーンが、なに? 日本アニメにしては頑張ったの? へえそうなんだあ・・・という程度のしょぼい代物で、そのさわりが冒頭のつかみだっただけに、一気に期待感が減退。そのあとも、そもそも空戦シーン自体が少ないし、空を飛ぶ爽快感や空間の広大さ、風を切って飛ぶスピード感といったものがまったく皆無。逆に宮崎駿の偉大さがよくわかる。
テーマは、なんかよくわからんけど、あれでしょ、「私が死んでも代わりはいるもの」ってやつでしょ・・・って、その10年以上前の問題設定に対して何の新しい答えも用意してないって、いったい何を訴えたかったのか・・・
で、そのテーマが、すべて登場人物の口から語られると。その多くを語る草薙水素のセリフの長いこと、そして菊地凛子の下手なこと(バランスをとっていうと、加瀬亮も大概なもんだが)。なお、そこで語られている概念的主題というのは、別に難解なわけではない。紙に字で書いてあれば誰でも簡単に理解できる程度の事柄。ところが、動きのない画面で下手な声優が長々としゃべるから、頑張って聞いてあげるのが大変だというだけの話。(にもかかわらず、こういうところに押井守の「哲学」とか読み込んじゃう人とかいるんだろうね。)
というわけで、とにかく退屈の一言に尽きる駄作。そもそも、「子供が戦争する」という設定自体が、実のところ日本アニメの伝統ど真ん中であって、ほとんどのアニメで子供が戦争しているのである。小学生がロボットに乗って戦うアニメだっていくらでもある。本作の登場人物たちは、その文脈で見ると、とても子供には見えない。ただ口で「子供だ子供だ」と言っているだけであり、その程度では「子供が戦争する」ことのいびつさなんか見えてくるわけないのだ。
・・・ああ、それから、エンドクレジット後の一幕は、まさに蛇足としか言いようがない冗長表現で、結局、あのくらいしてやらないと理解できないような頭の程度を観客として想定しているのだろう。ふざけた話だ。