Eric Darnell, Tom McGrath監督『Madagascar』 (邦題:マダガスカル)

マダガスカル [Blu-ray]

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ライオンは本来、シマウマを襲って食べるものであり、両者の間には敵対関係しかない。しかし都会の動物園で飼われている彼らは、飼育係から上等なエサをもらえるために、互いに親友となることができる。これは、先の本来性からすればゆがめられた関係でしかない。
さて、ひょんなことから野生の世界に放り出された彼ら。特にライオンは、他の動物を殺して、あるいは生きたまま肉を食いちぎるしか道がない。そうしないと自分が死んでしまう。空腹に苦しむ彼の眼には、親友のシマウマが上等のステーキに見えてしまう。野生の本能と、人為の産物である非本来的な友情の間の、言い換えれば、動物性と人間性の間のあやうい緊張が、この映画のテーマだ。
さて、結局は、人間性が勝つ。もちろんそうだ。1時間半のキッズ映画なんだからそれはしかたない。動物性と人間性のバランスを保つためのギミック、それは、そう、「寿司」だ! ライオンは寿司を食す。うん、またひとつ賢くなった。
この世界では、動物たちは、動物界における人間並みの知能を持っていて、互いに言語でしゃべることができる。NYの動物園の文明化した動物たちと、マダガスカルの動物たち、さらにはクモまでが互いにしゃべるのであるから、もちろん、動物園でライオンが食べていたステーキの元になったであろう牛たちも、同じ言語をしゃべるっていたのではないか。幸運なことに、ライオンは最後までそれに気づかないでいられたが、気づいてしまったらどうなるのか気になるところではある。
猿の惑星』とかのパロディとか、特にペンギン部隊の活躍とか、個々のアクションも楽しめるし、ライオン以外の草食動物たちが見ている前で、かわいい小鳥とかひよこが次々と食虫植物や蛇や鳥やワニに食べられていくシークエンスは、「これが野生だぜ」という感じでなかなか教育的だった。