Terrence Young監督『Dr. No』 (邦題:007 ドクター・ノオ)

007の映画化1作目だが、いま観ると、映画化1作目という歴史的価値しかない、いろんなところが下手くそな映画だと思う。
まず冒頭の、 Strangways が Three Blind Mice に殺されて車に積まれるところだが、車の窓かボディかに、撮影しているスタッフが映り込んでしまっている。びっくりして巻き戻してしまった。いくら昔の映画といっても、これは凡ミスだろう。
それから、キャラクターの放置具合がひどい。あの写真ばっかり撮ってる女はなんだったんだ? Three Blind Mice ってどうなったんだっけ? と思ったら、ああ、あの崖から車で落ちて死んだ奴がそうなのか。わかりにくい上に、この三人組の殺し屋のいいところが全然出てない死に方だ。この三人組は、冒頭で、タイトルテーマの音楽のリズムにのって乞食歩きをするところがなかなかおしゃれな感じだったのに、その後の扱いが小さすぎて残念無念。Bondに協力してくれる黒人のQuarrelなんて、いきなり火炎放射で丸焼きだもんなあ。しかも引きのショットだから、あれ? という唐突感だけが残る。
Bond は、ホテルの部屋を出る前に、クローゼットの開くところに髪の毛を仕掛け、またスーツケースの留め金のところに粉末をつけておいて、誰かが侵入して物色したらわかるようにしておく。これはスパイものの王道で、クリシェではあるがアガるシーン・・・なのだが。さて、帰ってきてチェックすると、案の定侵入の形跡がある。もちろん、正解はそのまま部屋を出て行く、のはずだ。ところが Bond は、そのまま酒を飲んで寝てしまうのだ。どういうことやねん。
で、不用意に寝てしまったばっかりに、ベッドにタランチュラをけしかけられてしまう。ここ、振り払った蜘蛛を、叩き潰すところが音楽の「バンバン」とシンクロするところはついニヤリ的に面白いのだが、タランチュラが体の上を這っているシーンが、明らかに透明の板の上を歩いていて萎える。
Dr. No の研究所では、捕えられた Bond が拷問ののち、小部屋に監禁される。Bond は辛くも通気口から脱出するのだが、その口があまりにもでかい上に、ぜひここから脱出してくださいとばかりに、ものすごく低い位置についている。普通に考えたら罠だが、もちろん罠ではなかった。で、実はここまでは、まあ昔の映画だからね、と許せたのだが、しばらく這っていくと、なんと大量の水が流れてくるのだ。通気口だぞ? しかも大水をやりすごした Bond は、そのまま這って、研究所の部屋に出てしまう。その辺水浸しじゃないの?
Dr. No との一騎討ちも、え? それで終わり? というくらいあっけない。というかあの手はなんなんだ。
とまあいろいろあるが、歴史的価値としてだけでも十分であることは確かだし、やっぱり Sean Connery はかっこいい。なんと、あれで、今の自分よりも年下だというのだからびっくりだ。とりあえず、あのスマートな歩き方を真似したい。