Jimmy Hayward, Steve Martino監督『Horton Hears a Who!』（邦題：ホートン　ふしぎな世界のダレダーレ）

Hortonの近くに舞ってきた一粒のほこりから声が！　実はそのほこりの内部、ミクロの世界には一つの街Whovilleがある。宙を舞っている間は大丈夫だが、水に落ちたりしたらその街は全滅だ。ところがその世界からの小さな声は、大きな耳を持った象のHortonにしか聞こえない。それもあって、ほこりの中にミクロの世界があるなんて誰も信じない。Whovilleでも、Hortonの存在、つまり自分たちの世界の外部にマクロな世界＝ジャングルが広がっていることを知るのは若き市長のNedだけだ。もちろん（彼の家族を除いた）他のみんなは誰も信じない。マクロとミクロで、真実を知った者同士の孤独な一体感が一つの柱。
もう一つのテーマは、子供の自立だ。ジャングルではHortonを悪しき思想を子供に吹き込む悪者として扱うカンガルーが出てくる。そのお腹の袋には子供カンガルーが入っているが、つねに母親の言うなりである。Whovilleの方では、いずれ父親の跡を継ぐはずの市長の息子がいるが、これがほとんどしゃべらないし見かけもNerdな感じで、夜な夜な家を抜け出しては廃墟となった天文台にこもる毎日。（ちなみに市長には他に96人の娘がいる。どんだけ・・・）
クライマックスは、Whovilleの人々の声が、ジャングルの動物たちの耳に届くかどうかで、Whovilleの運命が決まる、というかなり緊張感のあるシーンだが、ここでWhovilleの住民が一つになって「We are here」を合唱するその音楽はまったく素晴らしい。ここでその勢いに乗って、さっきの市長の息子が大活躍。そしてその、それでもマクロにはわずかに聞こえるか否かの声を受け取るのが、カンガルーの子供であり、彼は母親の命に背いて袋を飛び出し、自分の足で歩きつつ「No, mom」を言う。この一連の流れには、不覚にも落涙してしまった。
映像は、CGIがほんとうにすごい。綿毛のやわらかさ、水のみずみずしさが、これでもかと表現されている。ゴリラが口にバナナを詰めすぎて鼻から出るとことか笑ってしまったし、もちろん、なんでジャングルにカンガルーがいるの？　という不思議はあるのだが、Katieというなんかよくわからない黄色い小さいやつが、話の筋とは全く無関係にひとりできわめて不思議な佇まいを見せていて、他の謎な設定が全然気にならない。神に近い存在なのかもしれない。あのキャラを創造しただけでもこの映画には価値があると言えてしまいそう。