Xavier Gens監督『Hitman』 (邦題:ヒットマン)

ここの組織の暗殺者はみんなハゲで後頭部にバーコードの刺青がある。ものすごく目立つし、違和感ありまくりだ。前を歩く人がつるっぱげでバーコードついてたら、気になってしかたがないと思うが、誰も気にしている様子はない。リアリティの水準がどこに引かれているのか不安定。ところがこれが、プロットにはなんの関係もない。コンビニのスキャナでピッとかやるシーンもない。そこはもう少し考えてくれないと。
アクションは大変よい。相手の手をひねり上げると、ただちに肘のあたりを銃で撃つ。この種の、相手を戦闘不能にする、という技術が徹底して描かれていて、暴力映画としていい感じ。
他方で、話がなんかわかりにくい。ロシアの大統領暗殺に絡むストーリーなのだが、まずその役の人がそんなに大物っぽく見えない。どっかの市長とかが関の山だと思う。で、ハゲバーコードの殺し屋を、インターポールとロシアの公安と米国のCIAがとりあいするわけだが、それぞれの思惑がいまいち見えない。
それから、人間ドラマとしては、子供の頃から殺しだけを叩き込まれてきた殺し屋が、酷い目にあっている娼婦に同情して人間味を取り戻していく(ことで組織に反抗していく)、という話だが、まずこの殺し屋、女とかお涙頂戴話に弱すぎる。そんなんでよくやってこれたなと思う。組織も組織で、殺しの技術は叩き込んでいるのに、女の利用法とかは全然教えていないのでは片手落ちというものだろう。そんなんじゃ、ハニートラップにひっかかってすぐお陀仏だ。
それで思い出したのだが、殺し屋と女が街を歩いていて、殺し屋が「ちょっと待ってろ」といって何かしに建物に入っていき、通りに女だけ残されるシーンで、明らかに女は意味ありげな顔でフレームから消える。ここはどうみても、女が実はスパイだったという真相を示唆する演出だったと思うのだが、その後もその線での展開はなし。
あと、ベッドで誘惑してきた女を注射で眠らせたうえで、別の場所に出かけてひと仕事、それから帰ってきてベッドで眠る女の姿を見下ろす、というシーンがあるが、帰ってきたときに、ベッドルームから覗く向こうの部屋の椅子に、おっさんの死体が突然現れている。出かける前はなかったはずだし、翌朝のシーンになると消えている。なにあれ?
というわけで、一言でいうと話の作り方が下手くそだ。アクションはいいが、『Shoot'em Up』ほど突き抜けているわけではない。中途半端な印象。