Andy Tennant監督『Hitch』 (邦題:最後の恋のはじめ方)

いけてない男たちに、「恋を成就させる」ためのテクニックを教えるデートドクターのWill Smithが、恋人一歩前の女に、「遊びで女を落とす」テクニックの指南をしていると勘違いされるが、誤解は解けてめでたしめでたしという、ほんとにただそれだけの映画。作り手がなんにも考えてない様子がひしひしと伝わってくる。
なにより、主人公もヒロインも、映画を通して何一つ成長していないのが最大の問題点であり、つまらなさの原因だろう。出会って、誤解で別れかけて、誤解が解けて元の鞘に、というだけなので、いったんマイナスになったものがゼロにもどっただけ。
とにかく、映画のメッセージは、テクニックを伝授する男が主人公だけど、実は、恋には必勝法なんかないんだよ、一途な心こそが必要なものなんだよ、というぬるい主張でしかないために、作戦とかテクニックとか工夫といったものがたいして重視されていないので、どうも主人公の設定が活きない。しかし現実には、そういったものが恋愛の本質の一部をなしていることは誰でも知っていることであって、むしろそれがどんな役割を果たしているのか、他の要素とどう結びついているのかを解明するという方向に深めてほしかった。
ただ、この映画、けなしきれないと思うのはエンディングである。誤解が解けて元鞘、というのではどうも終われないと、作り手たちもさすがに思ったのであろうか、最後に、主な出演者たちがみんなでダンスする、というもうなんというか失笑するしかないようなシーンが入っている。うわぁ、いたたまれねえ! という感じだ。特にヒロインのEva Mendesの踊りはなんかほんとに恥ずかしい気持ちになってしまい、これでこの映画赦してやるかと思えた。ここは唯一、作り手たちの工夫が感じられて大変良かった(笑)。
あと偶然だが、ちょっと前の『キラ☆キラ』で町山さんが言及していたエリス島の移民名簿が出てきたので、あっと思った。