Wolfgang Petersen監督『In the Line of Fire』 (邦題:ザ・シークレット・サービス)

とにかく、Clint EastwoodとJohn Malkovichが、もうずっと観ていたいというくらい魅力的なのだが、俳優の演技に溺れることなく、正直あらゆる面で素晴らしい映画だと思う。
それは、米国現代史において唯一大統領を見殺しにしてしまったSS(「生きた伝説」)が、老骨に鞭打って再起をはかる復活モノとしてもよく出来ているし、Malkovichが途中で言うように、国家によって殺人を職務として与えられた者と、警護を職務として与えられた者の対決という構図もクリアで、かつそれに対応する形で、「高所から落ちそうになる相手の手をつかんで助ける」シーンの対称性がクライマックスをきれいに演出している。
あるシーンで使われたセリフが別のシーンの伏線になるところも見事。Eastwoodが同僚のRene Russoをデートに誘い、ちょっとつれなくされて去っていく後ろ姿を見ながら「自分に関心があるなら振り返る」と独りごちる。(このセリフ自体が、それより前で示される、Eastwoodは人間観察力に秀でている、という設定によって説得力を与えられているわけだ。)その後、ホテルのバーでいい感じになった気がしたのでキスを迫ると、やっぱりつれなくされて、Russoは部屋に戻ろうとする。Eastwoodはショボーンな感じかと思っていたら、Russoが振り返る。で、追いかけてエレベータに乗り込み激しくキス、そして部屋へという流れ。いいねえ。
「公共交通機関が好き」というのも前半でさらっと出しておいて、最後にまたさらっと出てくる。これもいい。
Malkovichの暗殺計画の進展も、破綻なく、かつ尋常ではない形でしっかり描かれている。特にやっぱりあのプラスチックか樹脂かなんかそんな感じの手作り銃がまた最高。
他方で、大統領警護のテクニカルなところもちゃんと見せてくれる。発砲があると、大統領はほとんど物扱いで、ものすごいスピードで外に運び出され、安全なところに連れ去られる。これは『Vantage Point』でもそうだったなあ。
というわけで、思い出そうとすると、良いシーンばっかり浮かんでくる傑作。いまからもう一度観てもいいくらい。