Neil LaBute監督『The Wicker Man』

Nicolas Cageもかわいそうだなこんな映画に出さされて・・・と思ってたら、主演だけでなくて製作(プロデューサー)もやってるじゃないか。じゃあ自己責任だから、とりあえず火あぶりでもしょうがないか。本当に焼かれなくてすんだのは、ラジー賞(による昇華)のおかげだろう。
まあとにかく、どこから突っ込めばいいのかわからんくらいあらゆる面でダメな映画。
冒頭、白バイ隊員のNicolas Cageは、トラック追突事故で炎上する車から母娘を助けられなくて、それがトラウマになり、精神安定剤みたいなのを常用するようになる。この、「少女の焼死」というのが、後半の、(自分の娘と言われる)「少女の火あぶり」につながり、だからこそ次は助けることでトラウマを克服する、というプロットのはずなのだが、Cageが時々見るフラッシュバックの幻覚は、焼死というよりもむしろ、少女にトラックが突っ込んでくるシーンであって、なんか一貫してない。
しかも、ショックで休暇を取るCageのもとに、同僚の女性警官が、「遺体は見つからなかった」とか謎な報告をしにくる。この(あらずもがなの)伏線だが、なんと、最後までまったく回収されないのだ! というか5分後には完全に忘れ去られてしまう。なんだったんだあれは!
さてこの伏線とは無関係に、元婚約者から手紙が来て、娘が行方不明だから探すのを手伝えという。そこでCageは謎の島に向かう。ここは、前述のトラウマ克服という意味で、動機としては十分だろう。ここに文句はない。
島に着いたCageは、なんか宿屋みたいなところに部屋をとる。まずこの時点で「?」である。この島は飛行機で物資を輸送する以外は、歩いて回れる程度の小さな閉鎖共同体なのだ。なんで宿屋があるの? あと、島の主産業にして、終盤のモチーフになるのは養蜂なのだが、この蜂のCGがまたチープでチープで。
それからクライマックスの儀式のシーンで、みんな動物を模した仮面をつけているわけだが、女を一人蹴り倒してCageが手に入れたのはなんと熊の着ぐるみ。着ぐるみお前だけだぞ。画面はコントにしか見えないのに、作中での空気はいたってシリアスで、もうどう観たらいいのかさっぱりわからない。
最終的には、少女が火あぶりにされるというのが、島全体が仕組んだ嘘で、それはCageを誘い込むための罠だった、というオチ。哀れNicolasはウィッカーマン(木の枝を組んでつくった巨大な人形)に囚われて火あぶりに・・・ということなのだが、それだったら、島に着いた時点で力づくで拘束するとか、食事に睡眠薬を入れるとか、いくらでもやりようがあったはずで、Cageが少女を探して島中歩き回る部分いらないよな。あと、飛行機で物資届けてくれるおっさん、何のために殺されたのかわからんし、あのおっさんいなかったら生活成り立たないんじゃないの? (またこのおっさんの死体がひどいことになってるんだこれが。)
オリジナルの『The Wicker Man』は傑作らしいので、そちらを観るのを楽しみに待つことにしよう。