Marc Forster監督『Quantum of Solace』 (邦題:007/慰めの報酬)

結論から言うと駄目な映画だと思うが、しかし、だからこそ、Daniel CraigのJames Bondは正解だ!ということを再確認できる。ああー、Bondのこのかっこいい場面を、なんでそんなふうに撮っちゃうかねえ、と。ぜひ、次作は監督を代えてほしい。
前作『Casino Royale』は、とにかく冒頭の追っかけっこが最高だったわけで、もちろんそれに匹敵するもの、それ以上のものを期待して観るわけだが、本作冒頭のカーチェイスシーンは、ん? まあ普通かなあという出来。そのあと、イタリアの街並みの屋根の上の追っかけっこがあって、お、ここか? と思って居住まいを正すも、さて、ここがこの監督の駄目なところだが、アップとカットバックの多用で、はっきりいって何がなんやら、追う者追われる者の位置関係が全然わからない。ここで、ああ、今回はアレかも・・・と、過剰な期待を持たないことにした。まあそれで観れたというのと、やはりCraigのBondを観ていたい、というのが半ばくらいか。
今回のBondは乗り物に乗って闘うシーンが多い。最初の自動車、次にボート、それから飛行機、っと。陸水空全部制覇だ。で、思うのは、すごいアクションシーンというのは、やっぱ摩擦が決め手だなということ。タイヤが地面と摩擦してキキーッといい、グリップを効かしてギュンギュンやる、これが自動車のシーンをカッコよく見せる。これが、ボートになれば摩擦の相手は水だし、飛行機だと空気である。摩擦力はだんだんとよわまり、乗り物の動きも鈍重になっていくわけで、もちろんクラッシュしたときの爆発とかはそれに応じて大規模になるが、別にそんなの見たいわけでもないし。
ストーリーについては、これは前作からそうだが、何をしにそこに行っているのかがよくわからない。いきおい、本来の任務の範囲がどこまでで、どこからがBondの暴走なのかも不明よくわからない。「水」のテーマも、もっとちゃんと扱うべきだと思う。
あと、ボスのMが、とにかくBondがいるところなら世界中どこにでも現れる。あんたそんなに暇な仕事じゃないでしょうに。まるで過保護な母親だ。これはやめてほしい。それから、前作から、ボンドガールは二人登場して、どうでもいい方の一人は悪者に無残に殺される、というお約束ができつつあるが、この辺もどうなのだろう。
まあいずれにしても、次回作が楽しみなことは間違いない。