Sylvester Stallone監督『Rambo』 (邦題:ランボー 最後の戦場)

ランボー 最後の戦場 [Blu-ray]

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ストーリーはお馴染みの、ジャングルに囚われた白人を助けにいくという話。しかし、ストーリーなどどうでもいい。とにかく、ひたすら、銃や鉈やナイフや素手(!)によって人間がどういうふうに破壊されていくかを、90分見続けろ!という映画。
現代のビルマでは、兵隊が村人を捕まえてきて、水田に地雷を撒き、そこでガントレットをやるという遊びが流行っているようだ。これは怖い。
タイとビルマの国境近くに隠棲しているRamboのもとに、キリスト教団体の男女がやってきて、ビルマ国内で弾圧されているカレン族に物資を届けるといってガイドを頼む。この人たちは基本的に楽天的で、正義はいつか勝つ、と思っている。あるいは、そう信じて、いま自分たちにできることをやろうとする。しかし、殺人は悪だとも信じている。
他方でRamboは、武器をとって戦わない限り、世の中は何も変わらないということを、経験を通じて熟知している。暴力に対しては、対抗的な暴力だけが、変化の力となる。このことは、上記の人たちが身をもって証明してくれる。村は政府軍の襲撃を受け、老若男女問わずものすごい暴力によって殺される。女は犯され、子供は引きちぎられ、串刺しにされ、焼かれる。生命が助かっても、待っているのは兵士としての洗脳教育か、(男女問わず)性奴隷としての悲惨な生活だ。キリスト教徒たちも、一部は殺され、一部は捕まる。捕まった一人などは、豚の上に吊るされ、足から豚に喰われて死ぬ。
傭兵たちとともに救出作戦に加わったRamboは、やはりありとあらゆる仕方で敵を殺す。白人女を助けるところでは、背後から敵の喉を掻き切る――それも素手で(「掻き切る」というよりは「引きちぎる」か)。終盤は、機銃掃射で皆殺しだ。
この一人一人の死が、きわめて丁寧に描かれている。体のどこを損傷し、どれだけの出血があって死ぬか、全員に具体的な死に方が用意されている。そして、死んだ後も、死体としてそこに転がっている。これは多くの暴力映画に欠けている、しかし当たり前のリアリティである。そしてそのリアリティのせいで、Ramboの「活躍」の後にカタルシスはない。ただ、敵が全滅したので戦闘が終わった、というそれだけのことだ。もちろん、それによって白人たちは助かった。しかしそれも、やはりそれだけのことだ。映画冒頭から描かれ続けてきた悲惨は、何の変化も被っていない。非暴力主義は無力だということをキリスト教徒たちが示し、そして暴力主義もまた無力だということをRamboが示す。
演出の妙は徹底的にリアルなゴア描写だけではなく、とにかくRamboが無口だ。特典としてカットされたシーンというのがついていたので観てみたら、すべてにおいて、Ramboと白人女のSarahとの、主題にまつわるような比較的長い会話が含まれていた。これらをカットしたことが、作品としての質と統一感をアップさせたことは間違いない。