Henry Selick監督『Coraline』 (邦題:コララインとボタンの魔女 3D)

3Dはもういいかな、という気がしてきている。速く動くとどうしてもブレるし、脳が疲れてどうしても途中で意識を失ってしまう。せっかくの美しいストップモーションアニメがもったいないと思う。
映像にこだわりすぎてストーリーが練れていないというのが妻との一致した意見。「目がボタン」というのは、それだけでかなり怖い設定だと思うのだが、それが活かしきれていない。クライマックスでは蜘蛛の化け物みたいに変身してしまうが、それでは怖さ半減である。それから、異世界の食べ物を食べたのに何の変化もない、というのは、ちょっと文法違反の気持ち悪さがある。致命的なのは、主人公の女の子が、最初から勇敢(でかつちょっと意地悪そう)であるために、物語の最初と最後で成長の契機が見えないことだ。最後に、みんなでピザパーティみたいなのをしているが、そこではちょっとおとなしくなっている感じがする。冒険をしておとなしくなるってどういうことなのか、ちょっとよくわからない。あと、両親が娘にかまわない理由が、二人で園芸の本を書いている、という設定なのだが、特殊すぎてイメージがしにくい。主人公は、ボタンを目に縫いつけさえすれば異世界に残れるのだが、最初からこの異世界を拒絶していて、迷う契機がないために、「ボタンを目に縫いつける」ことで何が失われてしまうのか、という点の描写ができていない。
要するに、初めから頭が良く、勇敢な女の子が、知恵と勇気で冒険をする、というだけの話になってしまっている。結局、どんな成長があり、いいことばかりではない現実世界のどんな点を、かけがえのないものとして再確認したのか、不明なままである。
ただ映像は非常にきれいなので、Blu-rayになったら2Dでもう一度観たい。