Ben Stiller監督『Tropic Thunder』 (邦題:トロピック・サンダー/史上最低の作戦)

この映画の主題は、一言でいうと「やりすぎ」。
まず、Robert Downey, Jr.が演じるKirk Lazarusは、オスカーを5回も獲得しているメソッドアクターであり、今回の映画『Tropic Thunder』のために、なんか手術をして皮膚を黒くして黒人になりきっている。役に入り込みすぎ。途中で、映画ではなくて現実の戦闘だということに気づくのだが、その後も黒人キャラで通し、その過剰な黒人演技を、本物の黒人俳優にツッコまれる(「俺たちは闇に溶け込める」)。
Ben Stillerが演じるTugg Speedmanは、当たりもののアクションシリーズが6作目を越えて人気が落ち、『Simple Jack』という「知恵遅れ感動系」映画で再起を図るがそれもハズレ、『Tropic Thunder』に再起をかけている。このTuggに、Kirkが、「知恵遅れ映画では知恵遅れきってはダメだ」という映画論をぶつところがある。『Rainman』のDustin Hoffmanも、『Forrest Gump』のTom Hanksもオスカーをとったが、『I am Sam』のSean Pennはとれなかった。それは、やりすぎたからだ、というのだ。もちろんここは、お前が言うな、というギャグだが。
さて、もう一人の主役級はJack Blackだが、麻薬中毒のコメディ俳優という、まあ普通の役である。しかし、Ben StillerがSimple Jackで、Robert Downey, Jr.が黒人になりきった白人俳優役なところに、Jack Blackである。これは偶然であろうか。いやまあ、偶然か。
あと、Tom Cruiseは、カメオ出演とかいうレベルではなく、完全に主役を喰っている。出てくるたびに爆笑するし、結局最後全部持っていくんかい、というくらいの出まくりのやりすぎである。
で、映画内映画の『Tropic Thunder』は、血が噴出しまくり、内臓出まくりで掻きまわしまくり、手首吹き飛びまくりの、過剰演出戦争映画だが、もちろんそれを含むBen Stiller監督の『Tropic Thunder』もそれを映している以上、同じくらいやりすぎ映画である。実際、映画内映画の監督が噴き飛ぶシーンと、それに続く生首のシーンは、あまりのやりすぎさに笑いが止まらなかった。あと好きなのは、終盤の、Ben Stillerが背負って逃げている子供が・・・というところ。
というわけで、設定も演出もギャグもごてごてのやりすぎ感でいっぱいだが、それをきれいに全部吸収してしまうTom Cruiseの存在感にやられた。