Antoine Fuqua監督『Tears of the Sun』(邦題:ティアーズ・オブ・ザ・サン)
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2006/11/22
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そこから始まる決死の脱出行。途中、襲撃されている村を見つけた一行は、介入を決意。乳飲み子を抱えた母親を見つけたら両乳房を切り取る。それが奴らのやり口なのだ。何もしないわけにはいかないではないか。一行は、敵軍を皆殺しにして数少ない生存者を救う。
実のところ、大変によくできた映画で、120分が一気に過ぎた。特に戦闘シーンが本格的で、特に撤退戦の方法論がすごくplausible。上のEdmund Burkeの引用がまさにテーマで、この命題は「米軍は善人である」という前提を置いているわけだが、実際Willisのチームは、自らの生命を犠牲にしてまでアフリカの見知らぬ黒人を救う、まさに善人である。軍人さんかっこいい。
「米軍礼讃映画」という括り方があるが、少なくとも二つの用法がある。一つは、あらかじめ米軍を礼讃している人しか楽しめない映画で、最近観たのだと、『Behind Enemy Lines』とか『Stealth』がそれに当たる。大抵はクソ映画だ。
もう一つは、かっこいい軍人を描くことで、観終わったあとに米軍を礼讃してしまう映画であり、本作はこちらに当たる。こういう映画は、必ずしも非難されるべきではない。現実に米軍が強大な力を持っている以上、命令に背いてでも善行に走る善人の軍人を描き続けることに意味はある。そういう視点があってこそ、現実の非人道的な作戦行動に対する批判が可能になるからだ。
そういう意味では、カメルーンとの国境にたどり着いたところで終わっていれば最高だった。ところが、そのあとあからさまに蛇足な感じの「米軍礼讃」シーンが、5分くらい続くのだ。現地の黒人女性が「米軍さんありがとう。あなたたちのことは決して忘れないわ」みたいなことを言ったり、一行に助けられた前大統領の息子のもとに現地人が集まって「Freedom!」とか盛り上がったりしていて、そのあと親米政権(というか傀儡政権)ができそうな感じをぷんぷんさせている。あ、あれ? という感じで、一気に作品の質が下がった気がするのである。そこがすごく残念。