Edward Zwick監督『The Last Samurai』(邦題:ラストサムライ)
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2008/06/11
- メディア: Blu-ray
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「優しい気持ちで観るぞ!」とかなり気合を入れて頑張ったのだが、やはり、どうしても、感動の根幹に関るところであまりにも大きな誤解があるために、感情移入がまったくできず。作り手たちの頑張りは伝わってくるんだけどねー。そういうメタ視点に立たされている時点で、映画としては失敗だよねえ。
お前ら戦国時代からタイムスリップしてきたんかい! とか、大村お前、天皇陛下に英語で怒鳴りつけるとは何事か! とか、天皇の目の前で「こちら明治天皇です」とかアホか! とか、忍者なら暗殺せんかボケ! とか、そういった諸々には全部目をつむっているのだが・・・
Tom Cruise関係のあれこれを捨象していうなら、日本の近代化・西洋化を進める明治天皇が、渡辺謙演じる勝元の命を賭けたアピールに打たれて、忘れかけていた武士道精神を取り戻す、というのが基本プロット。・・・え? 天皇が武士道精神? なにそれ。ばかなのしぬの?
もうね、最後まで見て、そういう話だと知ったときのショックたるや。これはもう取り返しがつかないです。
そう思って振り返ってみると、オープニングのナレーションでこんなこと言ってたなあ。
日本は一振りの剣でつくられたのだという。古の神々が珊瑚の剣を海に浸け、それを引き抜くと、四つの完璧な雫が海に落ち、それが日本列島をつくったのだと。私が思うに、日本をつくったのは勇敢な戦士たちだったのではないか。彼らはその命を、いまや忘れ去られつつあるあの言葉に捧げたのだ。「名誉」に。
というわけで、古事記の最初に書いてある「天之瓊矛」のエピソードが、「はじめに武士ありき」みたいな解釈を施されている。なんだそれ。
最後の、勝元が死ぬところでも、この無茶苦茶な日本文化解釈のために、何じゃそれ感がいっぱい。なんと、官軍の雑兵どもが、勝元の死によって、忘れかけていた武士道を思い出し、その場に土下座をする。まず、土下座というのは屈服の表現であって、敬意を表す姿勢ではないから、はぁ?と思わずにはいられないし、にわかに編成された国民軍というのは要するに百姓なのであって、全員が武士道精神に打たれて思わず土下座してしまうなどという描写には、説得力がまったくない。武士道というのがかりに日本文化の素晴らしき一側面だとしても、それは万人が備えているものではない。
ただこの最後のシーンは、エキストラへの演技指導が徹底していなかったのか、なんか周りを見ながら、「あ、みんなやるの? じゃあ俺も」的な感じで土下座していくので、実はリアリティ描写なのかもしれない。もちろん、それ以外のあらゆる演出は感動へと導いているので、観てると白けるのだが。
なお、日本人の役者陣は大変良かった。だから、ハリウッドへの日本俳優界の宣伝素材だと思っておけばいいのだろう。日本人が観るような作品ではないということで。