John Frankenheimer監督『RONIN』

RONIN [Blu-ray]

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欧米人にとって、日本の「RONIN」というのは憧れの対象らしい。確かにあの人あの人のことを思い浮かべてみれば、そのワイルドな髭面や、帰属対象を持たない自由な精神が、彼らに魅力的に映るのは不思議ではない。
さてこの映画は、デニーロとジャンレノが、小雪ムスカ大佐に裏切られながら、男同士のホモソーシャルな世界を築いていく物語だ。もちろん、日本の武士道の根幹たる衆道に対する飽くなき憧憬を、映画という一つの形にアレンジしたものに他ならない。
映画としては、何よりもまず言えるのが、マクガフィンの教科書のような作品だということ。みんなが血眼になって、無関係な通行人を巻き添えで殺しまわって奪い合うそのケースに、いったい何が入っているのかは最後まで明かされないし、観ていて気にもならない。次に、フランスの街中の狭い道路で激しいカーアクション。はっきり言って、これがやりたかっただけで、ストーリーとかどうでもよかったんだと思う。
タイトルの浪人についても、作中で説明がある。これは四十七士のことだった。つまり、浪人という、主君に仕えず金次第で何でもやる堕武士、のように見せかけて、心中には復讐の炎を燃やしているやつ、ということらしい。あの人も、20代なのに小学生と遊んでいるダメ人間のふりをしつつ、心の奥では暗い情念の炎を燃やしていたはずだ。なお、変な武士マニアの登場人物が、得々と赤穂浪士の解説をしているシーンで、彼の目の前にあるのはなぜか「毘」の旗印を掲げた武士が城で斬り合っているジオラマだ。上杉というと吉良の息子が養子に行ったとこのような気がするが、もちろんそんなことはどうでもいいのだ。
しかし、デニーロにしてもジャンレノにしても、ちゃんと役名があるにもかかわらず、どうしてもデニーロとジャンレノとしか見えないのはどうしたらいいのだろう。