Martin Scorsese監督『GoodFellas』（邦題：グッドフェローズ）

グッドフェローズ [Blu-ray]

大笑いしながら「あんたほんとおかしいや！」とか言ってたら、急に相手が真顔で「どういう意味だ？」、「俺がおかしいって？　俺のどこがおかしいんだ？　教えてくれよ。」とか言い出した時の恐怖。主人公は絶妙のタイミングで切り返して、それによって「からかわれていた」ことになって再度大爆笑になるが、もちろんその場にいる全員が、観客も含めて、答え方を間違ったら大惨事になっていたであろうことを知っている。
事後成立論者は、この緊迫のやり取りを「からかわれていた」と記述することしかできない。なぜなら行為は事後的にしか成立しないと彼らは言うのであり、事後的には「からかわれていた」ことになったからだ。しかし、我々の体験はもっと複雑であり、おそらく「からかわれていたことになったことになった」という感じだろうと思う。
閑話休題。3人のgoodfellasの演技は監督のすばらしさと相まって、なにがすばらしいのかもよくわからなくなっている（もちろん上で触れたJoe Psciの恐ろしさは別にして）。それに対して印象的だったのは、Henryの妻Karenが、極道の妻になっていく過程。普通のユダヤ人家庭に育った彼女が、それはもう見事に趣味の悪い装飾の部屋に住むようになる描写は、うわぁ、という感じで最高。