サム・メンデス監督『レヴォルーショナリーロード』

郊外の中産階級の専業主婦の不満がなんとかという話は、とっくの昔に常識であって、ベティ・フリーダン的な〜とか言えば何のことかわかるのであるから、そんなのは現代において主題になるようなものではなく舞台設定にすぎない。主役夫婦がずっと喫煙しているのと同じ。
この映画の教訓はなんといっても、夫婦喧嘩はちゃんと「燃え尽きるまで」やれ、ってこと。理屈の応酬で解決するようなものなら、最初から勃発していない。ちゃんと昇華して、カタルシスを得るところまでやらないと、燃えかすが残って大変なことになるぞと。終盤の、燃えかすの残った感じはほんとに怖い。
それでやはり気になるのは、夫の方が口ばっかり理屈ばっかりで、全然手を出さないこと。殴れ、というのではなくて、たとえば肩をつかむ、抱きしめるといった、身体接触を伴ったやり取りをすべきだと思うけどねー。
おまえは30歳にもなってそんなこともわからんのか、と(身につまされつつ)フランク=ディカプリオに突っ込みたくなったが、よく考えたら自分の方が2歳も年上だった。夫婦関係の破綻を描いた作品の主役が自分よりも年下だなんて。
ともあれ、こういう映画を観ると、いろいろ考えさせられました的な感想が出てきがちだが、それが間違いのもと。考えちゃだめなんだ。この映画は悪夢的で不快な経験としてトラウマ記憶化しておいて、自分が同じような状況になったときに、その、相手の説得を目標とした言いあいの果てにありうる最悪のシナリオの例として想起できるようにしておくのが吉。