アン・クリーヴス『大鴉の啼く冬』

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

Raven Black (Shetland)

Raven Black (Shetland)

いわゆる三人称多視点で、視点の主になっている四人(知恵遅れの老人、被害者の友人、第一発見者、刑事)は、いずれも、それぞれの意味で疎外感というか、このままでいいのか感を抱えている。しかしもっと重要なのは、それ以外の登場人物の視点に立ったとしてもこの構造は変わらないだろうということ。疎外から逃れられる人がいない、というのが〈現代の田舎〉というものなのだろう(あるいは「現代の」は冗長表現かもしれない)。
原題のRaven Blackはいわゆる濡れ羽色。被害者の髪の色を指している。鴉といえば、うちの大学では、夕方になると数百羽(千羽?)の鴉が激しく飛び交う。何を食べているんだろう・・・