竹内洋『教養主義の没落――変わりゆくエリート学生文化』

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

風呂で。私自身は読書で人格陶冶とか考えたこともないし、この世界について何かを知りたくて読むという動機もあんまり強くない(ので、本書を読んでも懐かしい感じもしないし、というかそういう時代に生まれなくてよかったと思う)。その本を読んでいることを前提にした議論の空間みたいなものがあって、そこに参加するための準備として読んでいるという感じだ。研究者の読書というのは大概そんなものだろうと思うが如何。
さて本を読まないといわれる現代の学生にも読書は勧めたいが、基本的には上の研究者の読書という形態を勧めるしか自分にはできないと思う。本を読んだから立派な人格が身に付くなんてことはありえないし、まともな本には世界の秘密は書かれていない(書かれていたらまともな本でないということだ)。しかし読めば、知的なコミュニケイションへの参加は確実にできる(まわりに相手がいなくてもブログを書けばいいし)。そしてそういうコミュニケイションは結構楽しい。この点を教えてあげるのが大学の(教養)教育で重要なことではないかと思う。