マーティン・スコセッシ『最後の誘惑』

 大作。長い。トリップしてきちがいみたいになっている連中にヨハネが洗礼しているところとか、生贄の動物を切るところとか、足萎えの少女がイエスについていくところとか、映像音楽大変よかった。ピラトのデヴィッド・ボウイもなかなか。あとユダの顔が立派すぎて・・・
 「誘惑」の扱いについては、結局イエスは十字架の上の妄想の中で、マグダラのマリアと結ばれたり子供がたくさん生まれたりして普通の人として幸せに天寿を全うしているわけで、死ぬ間際に年取ったユダが来て天使だと思っていた少女が実はサタンだと知らされて初めて、騙されてましたすいませんと神様に許しを乞うているわけだから、誘惑に〈打ち勝って〉いるわけでは全然ない。妄想から覚めた後も妄想内の記憶がなくなっているようには見えないので、要するに、ベッドの上で安らかに死ぬ代わりに、十字架上で残酷な死に方をする羽目になっただけ。この程度でみんなの贖罪ができたのかどうかちょっと疑問。