ケネス・バーク『永遠と変化』

Permanence and Change: An Anatomy of Purpose, Third edition

Permanence and Change: An Anatomy of Purpose, Third edition

もう少しで読み終るぞよ。

動機と状況は同じ一つのものである。この命題を採用すべき理由を最も端的に示す例として、一つ、ものすごく物質的な動機というのを考えてみよう。目覚まし時計=動機というのはどうだろう。ある人がいて、毎日ある時刻に起きないといけない。この時刻に起きないといけないというのは(始業時刻、家と職場の距離、着替えをして朝食をとるのにかかる時間、といった偶然的要因に基づいているわけだが)、これは一つの〈状況〉である。この人はその時刻に起きられるように目覚まし時計をセットする。こうして目覚まし時計の音が、起きるという行為の〈動機〉となる。さてここで、目覚まし時計の音というのは、上述した状況を表す省略語にほかならない。目覚ましが鳴ったときにこの人が起きるのは、簡単に翻訳するなら、目覚まし時計の音が、「あなたは職場からこれこれの距離のところに住んでいて、出勤にはこれこれの時間がかかって……だからいま起きないといけませんよ」と言っているからなのである。
(p. 284)