他店よりも低価格

人のmixiのコメント欄に書いたネタだけど、せっかく考えたのでこっちにも転載しとこっと。

「この、他店よりも低価格というのは、すばらしい試みだね。」
「ありがとうございます。お客様のために業界最安値を心がけております。」
「ふむ。ところで、このやり方は、他の店でもやっているのではないかね。それともここだけだというのかね。」
「あれは、当店のやり方を他店が真似したのです。今ではどの店でもやっています。」
「そうだろうね。ところで、この店の値段はほんとうに他の店よりも低いのかね。それとも、ここよりも低い値段で売る店があることを認めるかね。」
「神かけて、ソクラテスギリシャで最も低い値段だと断言できます。」
「そうだね。確かにこの値段はぼくがこれまで見てきた中でも一番安いよ。」
「それは私も自信をもって言えることです。」
「ところで君はさっき、『他の店よりも安く』というやり方を、ここ以外の店でも採用していることを認めたのではなかったかね。それともこれはぼくの聞き違いだっただろうか。」
「まさか、ソクラテス、あなたに聞き違いなどあるはずがないことは、ここにいる誰もが認めるところです。」
「そうか、それを聞いて安心したよ。最近物忘れがひどくなってきているからね。しかし、だとすると、この店の値段が最も低いということは真実ではなくなるのだ。」
「そんなことはありえません。この店が最安値だということはあなた自身も認めたではありませんか。」
「しかし、実際にそうなるのだ。ひとつ、この点を研究してみよう。君はさっき『他店よりも安く』を他の店でも実施していると言ったね。」
「それはもう何度も認めたところです。」
「ではその他の店では、『他店よりも安く』ということは、この店よりも安く、ということを含むのではないかね。それともそのようなことは起こらないかね。」
「それは・・・先に認めたところから、それについても認めざるを得ません。」
「ということは、君はこの店の値段が最安値ではないことを認めたことになる。」
「残念ながらそうならざるを得ないようです。」
「では、これは提案なんだが、いまついている値段よりも下げることで、『他の店よりも安い』という君の言葉をもう一度真実にしてはみないかね。それとも、商売人に真実は不要だとでもいうのかね。」
「それは、ソクラテス、神かけて、真実こそが商売人の美徳です。あなたの言うとおり、値段を下げることにしましょう。」
「君は商売人の鑑だね。ところで、いま下げてもらった新しい値段だが、『他店より安く』を実施している他の店では、これよりも安い値段で売るとは思わないかね。それとも、君にはある真実を求める心が、彼らにはないと思うかね。」
「それは、同じアテナイの人間として、わたしにだけあるとはとても言えません。彼らもまた真実を貫くために、さらに低い値段をつけることでしょう。」
「ではぼくも、君や彼らの真実を求める心を尊重して、この商品はただで持って帰ることにしよう。なぜなら、ロハより低い値段は存在せず、これなら君たち全員の真実を貫くことができるからだ。」
「・・・」