ルーマンとデリダ(とベンハビブ)
' Gibt es eigentlich den Berliner Zoo noch?'. Erinnerungen an Niklas Luhmann
- 出版社/メーカー: Uvk Univers.-Vlg Konstanz
- 発売日: 1999/11
- メディア: ペーパーバック
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1992年の秋、私は単学期フルブライト奨学生としてニューヨークに住んでいました。私が初めてルーマンにお目にかかったのはその何週間か前で、そのときルーマンも秋に数週間ニューヨークに滞在する予定だとうかがい、すごく嬉しく思いました。その頃、デリダもニューヨークにいて、ニューヨーク大学でいくつかの講義を持っていました。9月30日に、ルーマンとデリダはカードーゾロースクールのセミナーで初めて顔を合わせることになりました。司会はセイラ・ベンハビブが務めました。セミナーの形式はごく普通の、ルーマンとデリダがそれぞれ短い報告を行い、そのあとで互いに批判的な討論をするというやり方でした。
驚いたことに、セミナーへの出席者は20人から30人くらいしかいませんでした。ルーマンとデリダが講義室に入ったときにはちょっと閑散とした雰囲気で、これは主催者側も想定していなかった事態でした。セイラ・ベンハビブは女性なので、彼女にこの事態の打開を期待することはできませんでした。そこで、二人のヨーロッパ紳士は協力してテーブルをいくつも動かし、演壇を聴衆の正面に持ってきました。私はポケットに小型のカメラを持っていましたので、その様子を写真に撮りましたが、この写真は外界の存在に対するあらゆる疑念を永遠に払拭する証拠となりました。ルーマンとデリダがそろってテーブルの存在を認めているのですから、彼らの外部に何かが存在しているといわざるをえません。
ルーマンもデリダもかなりインフォーマルな服装でした。ルーマンはノーネクタイで、上着は皺がよっていましたし、スレンダーでどちらかというと苦行僧のようでした。デリダはセーターにチェックのネクタイをしていて、恰幅がよく白髪でしたので、おじいちゃんの理想型という感じでした。・・・(p. 143)